【インタビュー】法学研究科 久保野恵美子教授 「民法は社会の設計図」条文から社会の姿をひもとく
くぼの・えみこ
本学大学院法学研究科総合法制専攻教授。法学研究科長。専門は民法学。
法学研究とは何か。ある意味、理系分野よりも想像しにくいかもしれない。しかし、民法は長い歴史の中で積み重なった人類の知恵の結晶だ。「民法は社会の設計図」と語る本学大学院法学研究科・研究科長の久保野恵美子教授に法学研究や家族法の面白さを取材した。(聞き手は石川照也)
久保野教授は民法学を専門とする研究者だ。民法は個人間のほぼ全ての争いを解決するルールを用意している。久保野教授はその中でも家族法に関する研究を進めている。
久保野教授は「民法は社会の設計図」と表現する。契約や所有、代理、法人は社会が回るための基本だ。民法はそれらの考え方をルールとして整える役目を果たす。
人が物を所有し、人と人は契約で結び付き、損害を与えたときは損害賠償をしなければならない。このような図式を基本に民法は解釈されてきた。
だが、久保野教授はその図式に子供や家族関係という要素が抜け落ちているのではないかと疑問を覚えた。そして現在まで家族法研究を行っている。
「民法はローマ時代からの知恵の結晶」
民法は長い歴史を経て人類が積み重ねた集大成の一つ。人の手で作られたものだが、そこには解明されていない多くの知恵が詰まっている。
2026年4月施行の共同親権に関わる民法改正を取り上げよう。これまでは共同親権の対象が婚姻中の父母に限られていたが、離婚後も共同親権を選択可能になった。ここからどのような解釈が生まれるかは、まだ仮説を立てている段階だ。
しかし、単独か共同か以前に、そもそも親権とは何だろうか。興味深いことに民法には親権に関する条文はあるが、親権の定義は書かれていない。また民法の教科書に書かれている定義も必ずしも統一されていない。
親権は権利なのか義務なのか、その根拠は何に求められるか、親権は社会から託された義務に尽きるのか、親子関係そのものの価値に結び付くものなのかなど、議論が今も続いている。
最初の研究テーマは未成年の子が殺人等を行った場合の親の責任についてだった。最近も、親が責任を負うかが一審と二審で結論が分かれた裁判例があった通り、難しい問題だ。親が責任を負うのは当然と思われがちだが、その根拠は慎重に見極める必要がある。
「学生時代は法学よりも心理学や教育学に魅力を感じていた」と話す。だが民法という社会の設計図からバラエティに富んだ社会の捉え方が出てくるのが面白いと思うようになった。
それからは「やらずにはいられないこと」を研究の軸としている。研究では物事を一面的に見ないことと流行に左右されないことを大切にしている。
最後に本学を志望する高校生に「自分をよく観察して、その特徴を知って、可能性を拡げていってほしい」と言葉を送る。観察であって評価ではないことがポイントで、動植物を観察するように自分を観察して、他の人と違う特徴を知って、可能性を拡げてほしいと話した。
