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寺崎哲也教授、紫綬褒章を受章

本学大学院薬学研究科の寺崎哲也教授が平成二十五年度春の褒章において紫綬褒章を受章した。寺崎教授は長年、「身体の中の薬の運命を解き明かす研究」に取り組んでおり、薬物の体内動態研究において優れた業績を挙げたため今回の受章となった。寺崎教授は、脳の毛細血管内皮細胞の働きを明らかにする研究に中心的に取り組んできたが、近年、タンパク質の定量法が研究の鍵を握ると考え、重点的にその開発に取り組んできた。従来、タンパク質の解析研究は網羅的に行われていたが、寺崎教授は定量するタンパク質の中で定量に適したペプチドをアミノ酸配列に基づいて予想する(in silico設計法・本学特許として日米などで登録)という独創的なアイディアを生み出した。薬はタンパク質によって運搬され、作用を表し、代謝・排泄されるためタンパク質の定量は薬学研究において重要であり、不可欠だ。寺崎教授の新しい測定法は身体の中の薬の運命だけでなくその効果や毒性を解き明かすための貴重な切り札となった。



タンパク質の定量方法には様々な方法がある。今回のタンパク質定量には三連四重極型質量分析装置を用いている。おおまかな原理は大きなタンパク質をトリプシンという酵素で分解し、バラバラにしてから定量に適した強いシグナルを出す一つのパーツ(ペプチド)を正確に測りとり、最終的にそのパーツの合計を調べていくというものだ。従来はこの測定方法を用いる際にタンパク質のパーツを網羅的に調べていため、タンパク質が無いとパーツを見つけることができなかった。しかし、in silico設計法の場合、タンパク質が無くてもそのアミノ酸配列が分かれば定量法が確立でき、数か月以上かかったパーツの選択が一分以内で完了する。この装置を用いるとあらかじめ必要なタンパク質のパーツだけを狙って測定できることから、測定の必要のないパーツから出る膨大なノイズシグナルを遮断でき、より微量のタンパク質を正確に定量できるようになった。

寺崎教授は今回の受章について「共同研究者のみなさんに感謝したい。今回の受章は私にとって最終目標へ向けての大きな励みになる」と述べた。また、「サイエンスの世界は誰もがチャンスを持っている。若い人には、できるだけ難しい課題に挑戦する勇気を持って欲しい。目標を達成した時はその喜びを糧として、達成できなかった時は経験を糧として、常に挑戦し続けて欲しい。チャレンジ精神は人間が成長するために必要な駆動力であることを体で覚えて欲しい。」とサイエンスの面白さについても語ってくれた。

寺崎教授の最終的な目標は定量プロテオミクス創薬だ。タンパク質は遺伝子を調べることによりどのようなタンパク質が生成されるかを知ることができる。つまり、体の一部の臓器を構成しているタンパク質の働きの特徴を知ることができるのだ。しかし、その臓器のどこにどの種類のタンパク質がどのくらい存在するのかという定量的な部分にまでは現時点では踏み込めてはいないため、タンパク質の働きの大きさの本質を知ることが困難である。寺崎教授は将来的に個別化医療を目指すうえで、定量的な部分に踏み込んだ創薬が必要だと述べている。動物実験で成功したものが臨床試験で失敗するケースが少なくないのも定量が必要な一例だ。病態時のヒトと他の動物ではたとえ似た働きのタンパク質を持っていたとしても、タンパク質の量の違いがあるために薬の効き方が異なる場合があるのだ。

定量プロテオミクス創薬には当然ながらタンパク質の定量が欠かせない。寺崎教授は自らが考案した測定法で個別化医療への次なるステップを踏み出している。「本学発の技術を広めて、東北大学の国際的な存在感を強めるのが私の使命」と語る寺崎教授の今後の活躍にも期待が高まる。

受賞 6341653924924254365
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