読み込み中

文系学部不要論に異議 ~野家啓一名誉教授 「人文学は思考力を養う」~

 日本科学史学会東北支部第161回例会が6月26日に戦災復興記念館にて開催された。例会には本学名誉教授・総長特命教授の野家啓一氏が出席し、「人文学のための弁明」の題で講演を行った。




 2015年6月8日に文部科学省が出した通達がその内容から文系学部不要論として受け止められ、大学関係者のみならず、多方面にて反対の言葉が上がったことを踏まえた講演会だ。野家教授はこの通達は、国立大学法人化に代表される新自由主義的大学改革の流れを汲んでいると述べた。改革の中で、予算の配分は多くの金額を必要とする理系学部に対して潤沢に配分すべきであるとされ、文系学部の研究は私立大学に任せるべきだという認識が広まった。このことが人文社会学部の組織の見直しを求めた通達へとつながったという。

 次に話題は人々の学問観の歴史的変遷へと及んだ。ギリシャ・ローマ時代から中世の西洋においては、三科と四科からなる自由学芸(リベラルアーツ)が自由市民の教養とされていた。三科は文法、修辞、論理で構成され、現在で言う文系の内容を含んでいた。一方四科は算術、幾何、天文、音楽理論から構成され現在で言う理系の内容に近かった。当時は七科すべてを修めるべきであると考えられ、「文系」、「理系」で人を分けることはなかったと野家教授は指摘した。しかし、17世紀の科学革命の時代に入ると状況が変わった。実験が学問を発達させる手段として確立。ガリレオやニュートンが優れた業績を残した。その結果として学問がもたらす結果の有用性が重視されるようになった。そのため目に見える技術の発展をもたらしにくい人文学の立場は低下したという。

 最後に野家教授は人文学によって養われる能力について説明した。人は人文学を学ぶことによって異質な他者を理解し、共感する能力や自明性を問い直す批判的な思考力が見につけられる。そのため自然科学を学ぶ学生も文系の学問に触れることで社会、文化リテラシーを獲得することが必要になるという野家教授の言葉にうなずく聴衆の姿も見られた。

 講演会の後には質疑応答が行われた。聴衆が投げかけた質問に対する野家教授の答えに質問者がさらに意見を述べる場面もあり、聴衆は理解を深めた。
講演会 8200829789901339220
ホーム item

報道部へ入部を希望する方へ

 報道部への入部は、多くの人に見られる文章を書いてみたい、メディアについて知りたい、多くの社会人の方と会ってみたい、楽しい仲間と巡り合いたい、どんな動機でも大丈夫です。ご連絡は、本ホームページやTwitterまでお寄せください。

Twitter

Random Posts