読み込み中

【書評】『マーゴットのお城』 桜咲ゆかこ 今人舎

 誰もが経験する別れ。もし、大切な人ともう会えないと知ってしまったら? 本学の大学院生が執筆した処女作『マーゴットのお城』。バイオリニストの息子である主人公と木彫りの人形のマーゴットとの別れを通し、互いを想う絆がテーマとなる作品だ。



 主人公は両親とマーゴットとともに、質素ながらも幸せに暮らしていた。ところが10歳の冬に、流行病で両親を亡くしてしまう。主人公は途方に暮れていると、人形のマーゴットが突然動き始める。「ここを、出よう。これからは、ずっとわしと一緒だ」。こうして、主人公とマーゴットは、バイオリンを手に旅に出る。

 父から教えられたバイオリンの演奏をしながら二人は生計を立てていたが、春に著名な建築家であるアオノさんと出会い、主人公はアオノさんの弟子となる。13歳の夏、主人公が建築家として一人前になろうとしていたころ、マーゴットからから衝撃の事実を切り出される。「わしは、もうすぐ動かなくなる」

 この言葉を受けてから主人公はどのようにマーゴットと向き合っていったのか。ひたむきに誰かを想う姿に、ぐっと胸が詰まる。

 もう一つ注目したいのは、主人公が大人へと成長していく姿である。主人公は幼いころから父とバイオリンを弾いていたものの、心から演奏を楽しめずにいた。しかし、アオノさんの建てた教会の美しさに心を奪われ、アオノさんの弟子となり建築の世界に踏み入る。初めて没頭するものに出会ってからの主人公の成長ぶりは、驚きとともにワクワクをもたらしてくれる。

 そして何より、いつの間にか読み切ってしまうほど、先へ先へと進みたくなってしまいたくなるのが、この小説の魅力だろう。読み仮名が振られ字が大きいのも要因にあるのかもしれない。しかし、主人公がどうなっていくのか思わず気になってしまうことも、思わず読み進めたくなる要因のような気がする。皆さんも主人公とマーゴットのいる世界に入ってみてはいかがだろうか。

 なおこの小説は、小説の内容を踏まえた絵本『マーゴット』とセットになっており、小説の中身の後日談も含まれている。絵本を開けると、黒田征太郎氏による温かみのあるイラストが並ぶ。小説の読後感に浸りながら絵本を読めば、心の中にある温かな気持ちがじんわりと広がっていくだろう。
文芸評論 6684150738100175848
ホーム item

報道部へ入部を希望する方へ

 報道部への入部は、多くの人に見られる文章を書いてみたい、メディアについて知りたい、多くの社会人の方と会ってみたい、楽しい仲間と巡り合いたい、どんな動機でも大丈夫です。ご連絡は、本ホームページやTwitterまでお寄せください。

Twitter

Random Posts