【研究成果】月起源のシリカ高圧層を発見
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隕石に含まれるシリカ相はマイクロメートル単位、またはナノメートル単位とごく微小である。ナノテクノロジーの発展により電子顕微鏡や集束イオンビーム加工装置を用いて10年前頃から観察・分析することが可能になった。今回発見されたのは、40万気圧以上の超高圧条件により生成するザイフェルタイトと呼ばれるα―PbO₂型シリカである。「このような相が形成されるために必要な高圧環境は地表へ天体が衝突する時以外では発生し得ない」と宮原助教は語る。NWA4734の放射年代測定の結果から、このザイフェルタイトは約27億年前に生成したことが明らかになり、この時期に月では天体の衝突が頻繁に起きていたと結論付けられた。同時期の地球では原始生命圏の形成が始まっており、この衝突の影響を受けていた可能性も示唆されている。
月起源の隕石を調べてその衝突史を推測することは、地球など月以外の惑星の歴史を推測することにも繋がる。月は地球や他の太陽系の惑星より小さい天体であるため、誕生後に地球よりもはるかに速いスピードで内部のマグマが冷えて固まった。これにより地表の変化が停止し、地球では現在消失してしまっているような古い天体衝突痕も残っているのである。
現在同研究グループではアポロ探査機が月面から持ち帰った月の石にもシリカ高圧相が含まれているかどうかを調べ、より最近に起きた隕石の衝突だけではなく、更に過去に起こったものについても研究を進めている。また今後の展望として宮原助教は、「月に限らず火星等他の惑星を起源とする隕石にもシリカの超高圧相が含まれていないか調査し、惑星の歴史を解明して行きたい」と語っている。