【研究成果】分子が細菌排除を促進 ~感染症治療薬への応用に期待~
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本学生命科学研究科の有本博一教授は同医学系研究科の赤池孝章教授らと協力し、8‐ニトロサイクリックGMPが細胞内から細菌排除を促進する鍵分子であることを発見した。私たちの身体は、細胞内に侵入した異物を選んで取り除く選択的オートファジーという仕組みを持っている。選択的オートファジーは異物にユビキチン鎖という目印をつけることで異物のみを除去することができる。今回の研究成果では、目印であるユビキチン鎖をつけるための目印の役割を8‐ニトロサイクリックGMPが担っていることを発見した。
細胞内のGTPは一酸化窒素、活性酸素と反応し、8‐ニトロサイクリックGMPを生成する。オートファジーにはリソソームという器官が大きく影響しており、リソソームにこの分子が局在していることから有本教授は8‐ニトロサイクリックGMPとオートファジーに何らかの相関があると考えた。今回の研究では外から8‐ニトロサイクリックGMPを与えると、細菌の排除が促進されることを解明。生き残る細菌の数は8‐ニトロサイクリックGMPを投与した細胞はそうでない細胞に比べて、圧倒的に多いことが判明した。また、8‐ニトロサイクリックGMPの生成を止めるとユビキチン鎖が付きにくくなること、ユビキチン鎖の生成を止めても8‐ニトロサイクリックGMPの量が変わらないことからユビキチン鎖が付く前に8‐ニトロサイクリックGMPが細菌に修飾していることを見出すことができた。
オートファジーのメカニズムの解明は疾患治療に新しい展開をもたらす可能性がある。今回の発見で8‐ニトロサイクリックGMPがオートファジーを制御できる因子であることがわかった。直接細菌を殺す抗菌薬を用いずとも細菌に目印をつける過程を補助することで人間が本来身に着けている免疫機能のみで細菌を排除できる。そのため、8‐ニトロサイクリックGMPは細菌感染症の治療薬としての応用が期待される。また、今回の研究で用いた細菌はA群連鎖球菌であったが、異なる細菌でも効果が認められることから一般性に富んでいることも確認された。
オートファジーのメカニズムの解明は今後の生命科学分野における最も重要な課題の一つである。8‐ニトロサイクリックGMPの発見はオートファジー研究にとって大きな一歩と言えるだろう。