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【研究成果】数の認識 人と近似 ~霊長類 ゼロ細胞の存在判明~

 医学系研究科の虫明元教授らの研究グループは、サルを用いた実験で脳に数の0に強く反応する細胞があることを明らかにした。本研究の成果は、霊長類が言葉や数字記号がなくてもゼロを認識できることを示唆しており、人が数を理解するメカニズムの理解につながることが期待される。

 数の0には二つの概念があると考えられている。ひとつは存在が無いという意味での「0」、もうひとつは0,1,2,3という順列としての「0」である。この概念が人に特有のものなのか、他の動物も持っているものなのかは、0を含む数の概念を理解する上で重要な問題である。
 本研究では数操作課題を訓練した2匹のニホンザルを使用。数操作とは、最初に提示された白丸の数を記憶し、次に提示された白丸の数を増減させることで最初の数に合わせる課題である。使用したサルは0から5までの数であれば、72%の確率で数操作を成功させることができた。
 虫明教授らが数操作を行っているサルの頭頂葉の神経細胞活動を電気的に記録したところ、0に強く反応する神経細胞を多数発見。0で最も活動が活発な細胞をゼロ細胞と名付けた。さらに、0以外の数には全く反応しないデジタルゼロ細胞と、0以外の数にも反応し、0に近づくほどに反応が活発になるアナログゼロ細胞に分けた。デジタルゼロ細胞は人が持つ二つの概念のうち、有無を表す「0」に相当し、アナログゼロは順列としての「0」に相当する。0に関する二つの概念を表す神経細胞が霊長類にも存在することを明らかにしたのは世界初のことである。
 霊長類の0の認知が人の認知に近いことが判明したことで、霊長類研究が人の様々な認知能力の研究に役立つことが期待される。例えば、有料の製品のなかでいくら安価でも好まれない製品が、無料になった途端に選好が優位となる傾向がある。これは行動経済学において不合理行動とされる。本研究成果は、人が無料(0円)に特別な意味を持つことで起こす不合理行動の科学的根拠へなりうる。
「人はどのようなときに誤った判断をしやすくなるのかということや、どのようにしたら望ましい判断ができるのかに関心がある」と虫明教授は語る。今後は演算をするときの脳の働きだけでなく、人が意思決定に至るまでの迷いや衝動的な判断を司る脳の仕組みを明らかにするために研究を進めていく。
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