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【特別インタビュー】ムツゴロウさん こと 畑正憲氏

 畑正憲さんといえばムツゴロウさんとしてお茶の間で親しまれる人気者だ。今回は氏に東大時代や社会人生活について伺うインタビューを敢行した。




―どのような大学生活を送っていましたか
 前半の2年間は教養学部に所属していたので文字通り教養を得るためにいろいろなことを学びました。「実験物理学」の授業は面白かったですねえ。最初の授業は今でも鮮明に思い出せます。磁力を発生させる機械で浮かんだ磁気のある鉱物に力を加えて回すことでリニアモーターカーの原理を授業で見せてくれましたね。他にも火山学の授業では岩に高圧をかけマグマの状態を再現しましたし、文学のセミナーに参加してヴァージニア・ウルフという作家について学んだこともありました。物理学や数学については高校時代すでに大学レベルの習得をしていました。そこで時間があれば単位にならなくても興味がある授業をどんどん履修していましたね。
 後半の2年間は人間のあり方を分子や原子の側面から考えようと考え生物学部に所属しました。
学部での勉強は本当に楽しくて、ただ学びたいという意欲のままに夢中で勉強していました。ああいった経験は後にも先にもこの2年間だけでしたね。

―勉強以外に取り組まれたものはありますか
 小説を読んでいましたね。ロシア文学にはまっていた時期もあって今でもキリル文字を見ると楽しくなります。
 同じ下宿に住んでいた学生仲間と一緒に美術館巡りをしたのも楽しかったですね。

―社会に出るにあたってはどのように進路を決定しましたか
 大学院生のとき妻が妊娠したので、妻は実家に帰ってもらいました。妻や生まれる子供のためにお金が必要だったので翻訳の下請けをしたんです。けれども数年後にやめました。
 その後は麻雀で日に1000円ほど稼ぐ暮らしをしていました。当時は30円あれば十分にご飯を食べられる時代でしたね。そんなとき、とある女性に「こんなことをしていたらダメだ、ちゃんと勤めれば良いことがあるよ」と説教をされました。あれは本当に良い出会いだったと思っています。
 そして新聞に学研映画(※)が賞を取ったと書いてあるのを見たんです。自分の知識を活かせそうだし面白そうだと感じました。自分のやりたいことをPRした文と小説を書いて学研に送りました。すると返事が速達で届き、社長と面接をして採用されました。まずは原稿取りとして仕事をしましたね。当時は若くて知識をひけらかしたかったので、執筆者相手に一席ぶってしまい原稿取りはやめさせられました。その後は短文を任されました。書いてみると後に単行本にまとめられるほどの人気が出ました。短文を書き始めてから3か月後に映画局に入ることができました。

―動物とのかかわりについて教えてください
 学生時代に動物に関する学問的知識を得ました。しかし本当に動物を理解するには、動物の側に下りていき人と動物が互いに学び合うべきだと考えています。動物相手にはできるだけ檻などを挟まないコミュニケーションをします。
 クマを飼ったときには牙も爪も抜かずに上半身裸で遊び、添い寝もしました。あるとき、人からクマはしっかりと調教しないとだめだといわれました。でも私は動物相手に調教するなんてことが嫌いです。だからそのクマにも調教はしませんでした。

―東北大生にメッセージをお願いします
 若いうちは何をやっても楽しいけれど、一番いいことは勉強することです。何かについての知識を得るということは対象をより深く愛するということです。動物もただ漫然と眺める人と、動物の治療ができるほどの知識がある人とでは後者の方がより愛を持っているといえます。大学時代は学ぶには適した時期なので、ぜひ皆さんも勉学に励んでください。

(※)学研映画…学研ホールディングス(当時は学習研究社)が制作した教材映画及びアニメーションを指す言葉。
特別インタビュー 4832641742584892590
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