【ルポ】復興の今 女川の様子と魅力・前編
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東日本大震災で甚大な被害を受けた、宮城県沿岸に位置する女川町。震災から4年半が経過しようとしていた9月某日、女川町の現状を視察するべく、私たちは車に乗り込んだ。そこで知り得た女川町の様子と魅力をお伝えしたい。
午前9時に川内を出発。はじめ曇っていた空は、高速道路を走っているうちに気持ちの良い青空へと変わっていった。
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およそ1時間で石巻市に到着。鹿島御児神社で車を停める。神社は標高56mの丘の上にあり、すぐそばの日和山公園からは左手奥に牡鹿半島、目の前には石巻湾と、海へ流れ込む旧北上川が一望できる。沿岸部一帯はすっかり津波に飲み込まれてしまい、現在はかさ上げ工事の真っ最中といった様子。川沿いにあった市場が9月1日に復活したと聞き、着々と復興が進んでいるようで嬉しくなる。
車に乗り、改めて女川町へ向かう。国道386号線を走っていると、傾いた電柱の隣に「津波到達地点」と書かれた標識が立っているのを発見。周りの建物の1階分くらいの高さはある。百聞は一見に如かず、実際にその高さを目にすると、津波に対して感じる恐ろしさが一層生々しくなる。
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午前11時半、「味の館 金華楼」で昼食をとる。店内に入ると、壁に「女川ポスター展」の作品がずらりと展示されている。「女川ポスター展」は、今年2月から5月にかけて河北新報社が復興支援プロジェクト『今できることプロジェクト』の一環として行った企画。女川町の商店街の店々が仙台を中心に活動する広告クリエーターたちとともに、オリジナルポスターを制作し、町に展示した。どの作品も個性豊かで、眺めていてとても楽しいので、実際に見てみることをおすすめしたい。
美味しい食事に満足した後は、2012年4月にオープンしたというきぼうのかね商店街へ。「きぼうのかね」とは、震災前までJR女川駅にあったからくり時計の鐘だ。瓦礫の中から発見された鐘が商店街の奥に掲げられており、槌で叩くと澄んだ音を響かせる。こぢんまりとした商店街をぐるりと一周してみると、飲食店、服屋、本屋、船具屋……と、お店の種類は思っていた以上に豊富だ。
その中の一軒、「阿部正茶舗」というお茶屋の女将さんに招かれ、お茶をいただくことに。店内の椅子に腰掛け、女将さんが煎れてくれた緑茶を飲みながら、震災当時の話やポスター展の制作裏話など、色々な話を聞かせていただいた。阿部正茶舗のポスターは女将さんと旦那さんの白黒写真に茶葉の緑色が映える、魅力的な作品に仕上がっている。なんでも、その製作過程については一切知らされていなかったのだとか。ある日の夕方、担当のクリエーターに「ここに立って、向こうを見ててください」と言われただけというポスター撮影。「もうこっちは寒いし疲れてくるしで、ポスターなんてどうでもよくなっちゃったのよー」と笑う女将さん。こちらもすっかり笑ってしまった。
ポスター展は好評で、商店街はポスター展に来た客でとても賑わったそうだ。しかしポスター展が終わり時間が経った今、商店街のお店や人はだんだん減ってきている。再建のため中心部へ移転してしまったのだ。寂しさを感じつつ、私たちは商店街を後にしたのだった。
(後編に続く 次号掲載予定)