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【研究成果】脂質摂取により胎児の脳神経細胞が減少 ―脂質栄養研究の発展に期待―

 医学系研究科の大隅典子教授らは、妊娠マウスの偏った脂質摂取が、生まれてくる仔マウス脳の神経細胞の数を減少させることを明らかにした。神経細胞の減少によって、仔マウスの脳形成異常と過剰な不安が引き起こされる。




 脳は乾燥重量の6割程度が脂質で構成される組織であり、脂質は脂肪酸から構成されている。中でも多価不飽和脂肪酸は体内で作ることができない必須脂肪酸であり、食物から摂取しなければならない。多価不飽和脂肪酸は主に、大豆油などに含まれるオメガ6と魚介類などに含まれるオメガ3に分類される。オメガ6:オメガ3摂取比は4:1が理想。しかし、現代社会では先進国の食事を中心に、オメガ6系脂肪酸の過剰な摂取とオメガ3系脂肪酸の摂取の減少が見られている。この食事様式が脳形成にどのような影響を与えるのかを明らかにするために本研究は行われた。
 
 妊娠の2週間前から産後10日までの間、オメガ6過多/オメガ3欠乏飼料を母マウスに与え、その仔マウスの大脳新皮質を解析。オメガ6過多/オメガ3欠乏飼料を与えられた母マウスから生まれた仔マウスは、標準的な飼料を与えられた母マウスの仔に比べて大脳新皮質の厚さが薄くなっていた。脳を構成する細胞を生み出す神経幹細胞の数は変わらず、実際に脳機能を担う神経細胞の数のみが減少した。

 仔マウスの神経幹細胞を解析すると、オメガ6過多/オメガ3欠乏飼料を摂取した仔マウスの神経幹細胞は神経細胞を生み出す能力が低下しており、神経細胞の働きを補助するアストロサイトという細胞が多く作られていた。この現象の原因となった脂質分子を明らかにするために脂肪酸の代謝物を網羅的に調べると、オメガ6であるアラキドン酸由来のエポキシ代謝物は増加し、オメガ3であるDHA由来のエポキシ代謝物は減少していた。それぞれの代謝物の役割を解析した結果、アラキドン酸由来の代謝物はアストロサイト産生能を高め、DHA由来の代謝物は神経細胞産生能を高めることが判明した。

 脳形成異常が将来の仔マウスの情動に与える影響を調べるために、生後標準的な飼料を与えた仔マウスが成体になった後の不安行動を解析した。胎生期にオメガ6過多/オメガ3欠乏飼料を与えられていた仔マウスは過剰な不安行動を示した。

 本研究成果は、母マウスの脂質摂取が仔マウスの脳形成に大きな影響を及ぼし、その際に仔の将来の情動の一部が決定されうることを意味している。この成果をきっかけにヒトにおける脂質栄養研究のさらなる推進が期待される。

 「どのような脂を摂取するかが重要。特に妊娠中は鯖や鰯といった青魚などの魚介類から摂取するのが一番いい」と大隅教授。今後は父マウスの脂質摂取が仔マウスにどのような影響を与えるのかを研究していく。
研究成果 879444972837191850
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