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【研究成果】再生医療の迅速化へ ―Muse細胞 神経機能を再建―

 医学系研究科の出澤真理教授と富永悌二教授らのグループが、Muse(ミューズ)細胞を用いて脳梗塞動物モデルの失われた神経機能の回復に成功した。本研究成果によって、今後再生医療が迅速かつ低コストな根本治療としてより広く施されることが期待される。




 Muse細胞は、骨髄・皮膚などの生体組織に存在し多様な組織や細胞に分化できる多能性幹細胞。腫瘍性を持たず安全性が高いことで知られている。従来の再生医療は、多能性幹細胞の製作や移植前における目的とする細胞への分化のために、大がかりな施設で遺伝子導入などの操作を必要とし、時間とコストがかかった。それに対しMuse細胞は①生体由来の幹細胞で腫瘍化のリスクが低い②血管に投与するだけで傷害部位に集積する③自発的に傷害組織に応じた細胞を見極め分化し修復する④他人から採取したものを利用できる⑤遺伝子導入などの操作を必要としないため安全、といった性質をもつ。

 実験では脳梗塞の成体ラットの脳に、ヒト皮膚から採取したMuse細胞と、Muse細胞でない細胞(対象細胞)をそれぞれ打ち込み、細胞が生着・分化する様子を観察した。その結果、Muse細胞は梗塞部に生着するとわずか3日で神経細胞へ分化し始め、7日目にはネットワーク状に繋がっている様子が観察できた。また、3か月経過後も多くのMuse細胞が腫瘍を形成せずに神経細胞となって残存していた。一方、対象細胞ではそもそも細胞が残存しなかった。

 また、実験では神経回路網の観察も行った。運動をつかさどる錐体路という、大脳皮質の運動野と脊髄を走る複雑な経路を観察。運動野に生着したヒトのMuse細胞は神経線錐を脊髄まで伸長させ、錐体路を再建していた。さらに、大脳感覚野に生着したヒトのMuse細胞は四肢の知覚神経とシナプスを形成し、知覚回路網を再建させていた。脳梗塞によって失われた運動と知覚の両方の機能が取り戻されたことを確認することができた。

 脳梗塞患者からの反響が大きかった今回の研究成果。今後は富永教授のグループを中心とし、軽度の脳梗塞患者にMuse細胞を投与して治療の効果を確認していく。さらに、対象とする脳梗塞の種類の拡大や製剤開発によりMuse細胞での治療をより一般的なものにしていく方針だという。
研究成果 3363744082647525423
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