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【復興の今】飯舘村帰村の今 中編

 福島第一原発事故から5年が経過した今年4月、報道部は福島県飯舘村を訪問した。飯舘村は現在全村避難区域として指定されているが、17年3月には帰宅困難区域を除く「居住困難区域」と「避難指示解除準備区域」の避難指示が解除される方針となっている。今回は飯舘村の佐須地区で村の再建に力を尽くす農業菅野宗夫さん(65)の話を取り上げる。




 佐須地区にあるお宅に伺うと、愛猫と一緒に明るい笑顔で出迎えてくれた菅野さん。受け取った名刺には「山のこだわりや」という文字が記されている。

 菅野さんは「自然は自分の生きがい」と力強く語る。幼い頃から農業を通して自然に慣れ親しんでおり、自然の大切さやありがたさをよく知っている。原発事故で自然の恵みを奪われてしまった村のために、菅野さんは多くの人と協働し、様々な努力を重ねている。

菅野さんは現在、NPO法人「ふくしま再生の会」で野菜の栽培試験を行っている。「チャレンジハウス」と呼ぶビニールハウスには明治大学の研究者らが開発した装置があり、自動で栽培養液と水を混ぜてハウス内の土に行き渡らせることができる。さらに天気や温度、湿度などをセンサーが測定し、養液と水の混合比や量を調整する。測定データは村に提供し、大学の研究室が共有する。今後は収穫した野菜の成分分析もしていくつもりだという。

 チャレンジハウスの狙いは、避難解除後、帰村して農業を再開したいと考える農家のモデルになること。様々な野菜を栽培し、1年でも早く実践に移せるよう試行を重ねている。

 もう一つは、「風評」を拭い去ることだ。「『福島の』野菜というだけで消費者には避けられてしまうかもしれない。しかし、きちんとした数値を用いて安全を証明できれば、安心して買ってもらえる」。

 放射能という見えないものに対する不安は、自分たちの手で得た測定結果で対処する必要がある。飯舘村では村民たち自身が村の汚染量を測定、記録し続けている。村の問題を村民たちで共有し共感することが、帰村の気持ちにつながると菅野さんは考える。

 話を聞いている最中にも、菅野さんのお宅には研究者や学生などたくさんの人が訪ねてくる。菅野さんは「色んな人と協力し、共に解決していくことが大事」と、「協働」の大切さを強調した。さらに「若い人たちが風評に踊らされてしまったらどうしようもない。次の世代を担う学生たちこそが、福島の頑張りを広めていってくれれば」と話してくれた。
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