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村上元彦教授 転任インタビュー ~家族の後押し受け挑戦へ~

 理学研究科地学専攻の村上元彦教授は、8月初旬にスイスの大学に転任する。今回のインタビューでは、村上教授の研究や東北大生の印象について話を伺った。




―研究内容を教えてください

   地球の深部構造について研究しています。地表からの深さ約3000キロメートルで、マントルと外核がどのように分かれているのかを調査しています。重さの軽い岩石からなる固体のマントルと、それより重い金属からなる液体の外核が分離するには複雑なメカニズムがあります。それを探るために地震波を用います。圧力や温度を変化させることで、人間がたどり着けない地球深部の環境を再現し、そこに伝わる波の速さの違いからどのような物質が存在するのかを探ります。

―どのように私たちの生活に生かされるのでしょうか

   正直に言うと直接役には立ちません。しかし、未知のものを解き明かすことは人々の好奇心を満たします。私自身はそこに学問の価値があると思います。このことは文学のような文系の分野にも通じます。給料をもらいながら自分の好きなことを研究しているので、それを伝えることが自分の責任であると感じます。

―研究の道に進んだ経緯を教えてください

   初めて地学を学んだのは大学に入学してからでした。2年次に学科所属を決める際、地球科学の先生との出会いが大きな転機になりました。友達に誘われて入部したヨット部の練習が厳しく、単位を取得するのがやっとでしたが、4年次の春に部活を引退した後、研究室に配属されそこで過ごすうちに、自分の好きなことに没頭できる研究生活に魅力を感じました。幸い研究する上での経済的なサポートもあったので、続けられる限り研究を続けたいと思っていました。

―スイスに転任するきっかけは何ですか

   学生のころから学会を通じて海外の研究者との交流があり、その中で海外での研究に興味はありました。海外の教員公募は日本と異なって、とてもオープンに行われ広く情報を開示します。限りある研究人生の貴重な経験として、それにチャレンジしたいと思い申し込んだ結果、採用となりました。

   スイスは国土が小さく資源も少ないです。したがって、大学等の教育機関では人材を育成しようという意気込みを強く感じます。

―葛藤はありましたか

   勢いで決めてしまったので、そこまで深くは悩みませんでした。家族が背中を押してくれたことがとても大きいです。家族が反対したらきっぱりとやめるつもりでした。ドイツ語圏の国へ家族で移住するので、スイスの教育や子育ての環境のよさも転任を後押ししました。また、現地の日本人のコミュニティーの存在も心強かったです。

―東北大生の印象は

   真面目で素直でとても優秀な学生です。その中でも特に、主体性がある学生には目を見張るものがあります。私は研究者を育てたいという気持ちが強いのですが、主体的にアイディアが出せる学生は優秀な研究者としての素質が十分に備わっているように思います。主体性を持つことは自分の考えに固執することとは異なります。他の人の意見を聞き入れる素直さが研究する上ではとても大切です。

   一方で、東北大生は輪を重視しすぎる傾向があるようにも感じます。そうすると、自分が持っている個性を失ってしまうのではないかと思います。集団の中では、それぞれの考えを主張しそれを認め合える関係が理想です。また、時には集団を離れて一人で問題を解決しようとすることも必要です。

   東北大には素晴らしい学生が多いです。そのような学生とたくさん交流できたことを大変嬉しく思います。
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