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【サイカフェ】第163回 「多種共存の森 ~その仕組みと恵み~」

 第163回サイエンスカフェ「多種共存の森~その仕組みと恵み~」が4月19日、せんだいメディアテークにて開催された。講師は本学大学院農学研究科の清和研二教授。


 まず清和教授は実際の森林の写真を交えながら、日本における森林伐採と、気象害や虫害、台風による崩壊といった、単一的に広がっている針葉樹林にまつわるさまざまな問題点を指摘し、森林における種多様性の重要性を説いた。種多様性については、種子から発芽して生長した同種由来の菌の毒性が最も強いという種特異性を持つ立ち枯れ病菌の散布や、発芽した植物に養分を送り成長を促す菌根菌の働きなど、さまざまな生物の相互作用や菌類によって、創出されていることを説明した。

 さらに清和教授は、水質浄化機能の低下と種多様性の喪失の関係を検討。多様な広葉樹が成長し、細根の量が増加した強度間伐区における水質浄化機能の高さから、スギ林に広葉樹を混ぜると水質が浄化されることを解説した。

 生態系の機能が有効的に達成されるために林冠レベルでの混交が求められる森林だが、少数の優占種と多数の非優占種からなる天然林では、木材の体積を示す材積割合のうち、全体の10%以上が3種であるのに対し、1%以下は約50種にも及ぶ。清和教授は、使用されている木材が偏っている現状を指摘し、加工が難しい広葉樹を積極的に利用していくことの必要性を説いた。

 講義の後には、各テーブルで本学の学生を中心にディスカッションが行われた。中には、大学の研究と現実の隔たりについての話題も上がった。本学大学院農学研究科生物共生科学分野の増田千恵さん(修士・1)は、「自分たちが思っている通説に対して、いろんな見方があるのが新鮮だった」と、学外の人と交わした議論を振り返った。

 イベントの最後には、テーブルごとにまとめられた疑問点に対して、清和教授が一つ一つ答えていった。参加者からは、広葉樹の利用や産業としての成立についての質問が多く寄せられたが、清和教授は「あくまで少しずつ森林の種多様性を改善していくことが肝要」と述べた。

 会場は子どもからお年寄りまで多くの人が訪れ、満席になるほどの盛況を博した。また、広葉樹を含むさまざまな木材の小片や、広葉樹を用いて作製された家具が展示され、多くの来場者が実際に手に取りながら、木材によって異なる軽さや手触りに興味を示していた。学校に掲示されたポスターがきっかけで本イベントに訪れた高校生は、「元々動物に興味があったが、森林という新しい視点で生物を見ることができた。学校の授業を通してさらに理解を深めたい」と語った。
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