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【教員インタビュー】大学院工学研究科 西澤松彦教授

 医工学と聞いて、あなたはどのような研究をイメージするだろうか。2008年、本学に日本で初めての医工学研究科が設置された。今回のインタビューでは、同研究科でのウェットデバイス分野の研究に加え工学研究科でバイオデバイス分野の研究も行う、西澤松彦教授に話を伺った。



―研究内容は

   スマホやロボットなどがハード、ドライで電子駆動なのに対し、我々生体はソフト、ウェットでイオン駆動です。対照的な性質を持つ生体とマシンとをうまく組み合わせるため、生体と相性の良い柔らかくてウェットなデバイスを作る研究をしています。

   医工学研究科は医学部との共同研究も非常に多く、例えば脳神経外科の先生によるリクエストから発展した研究に、ハイドロゲルを基板とした電極があります。てんかんの治療では脳の異常を調べるため、シリコンゴムを用いた電極を脳に付着させその活動を測るという方法が取られてきました。この従来品に対し、約80パーセントが水でできているハイドロゲル電極は、非常に柔らかく収縮性を持つのに加え、脳の表面に密着させても酸素や体液が通過でき、脳の損傷を抑えながら信号を拾うことができます。また電極部分も有機物でできており、金属が一切使われていないため磁気を利用するMRIなどと併用できます。このように良いことずくめといった感じですが、主にウェットであるという点で従来のものとは大きく異なります。そのため、優れた性能とともに従来品に劣らない使いやすさも必要となります。実際の手術では一刻一秒を争うため、取り出してすぐに使えるようウェットな状態でパッケージするという工夫がなされています。現在も多大なシェアを占めるシリコン製の電極に替わる目標のもと、3年後の実用化を目指して製品開発が進められています。

   他にも、生体に馴染みの良い電源を実現する研究として酵素電池があります。ミトコンドリアという小器官で、糖から我々の活動のエネルギーとなるATPを合成する際、酸化還元反応とともに電子の流れが生じます。これを利用したのが酵素電池で、反応を起こすための酵素を電極に組み込むことでATP合成の代わりに体内にイオン電流を流すことができます。体に電気を流すと傷の治りが早くなる、薬や美容剤がよく染み込むなどの効果があり、バイオ発電ばんそうこうやバイオ発電スキンパッチ用の電源として開発が進んでいます。体温付近で働くため、皮膚に触れてもやけどの心配がありません。また、金属を使用していないためゴミ箱にそのまま捨てることができます。つまり、人にも環境にも優しい使い捨てタイプの電源なのです。また、この反応により生成される水を活かした、乾燥を自動で防ぐ自己保湿型スマートコンタクトレンズなども開発しました。基礎研究も大事なことですが、誰もが日常的に使える新しい物を世の中に生み出していきたいというのが最近のこだわりです。


―研究者になった経緯は

   元々は工学部の化学系の学生でした。そこで電気化学という分野に出会い、電子やイオンなどの目に見えないものを扱う研究に惹かれていきました。見えないレベルの現象が結果として目の前に起きている現象にどう関わっているかを想像することがたまらなく面白かったのです。バイオデバイスの研究も同じで、いまだ謎の多い生体システムに馴染みの良い材料や仕組みを作り融合をはかることに想像力を刺激されます。ささやかな現象でも、自分で設定した条件の下で起こる現象は唯一無二、常にときめくものを感じます。研究の楽しさに魅せられて、気づいたら研究者になっていました。


―本学の魅力とは

    本学は「研究第一」「実学尊重」「門戸開放」を理念として掲げています。研究を通してワクワク感を味わいたい人、自分の研究で世の中の役に立ちたい人はぜひ、本学の教育を体感してほしいです。また、本学は日本で初めて女子を受け入れたほか、全国的に国際化が最も進んでいる大学の一つです。機械系では全講義で英語での受講ができるサポートが整えられています。そして仙台は非常に過ごしやすく、学びの場や青春を過ごす環境としてとてもおすすめです。


―高校生にメッセージを

   目の前の現象や様々な仕組みに想像力を働かせ、楽しんだり、驚いたりしてみませんか。そこに寄り添う技術開発に関わってみませんか。それができるのは、東北大学の工学部です。

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