【連載】「あの日」を訪ねて ④津波復興祈念資料館「閖上の記憶」 ~閖上の過去と未来をつなぐ~
東日本大震災で大きな被害を受けた名取市閖上地区。8・4メートルもの巨大な津波によって多くの尊い命が奪われた。震災後の閖上の街で人々はどのような活動を行ってきたのだろうか。
『「あの日」を訪ねて』第4回で紹介するのは、津波復興祈念資料館「閖上の記憶」。震災の翌年の2012年に旧閖上中学校前に建設され、現在は沿岸部へと移転している。目印は資料館のそばに掲げられたこいのぼり。震災で亡くなった人々が空から閖上を見つけることができるように、という意味が込められている。
資料館に入り、まず目に飛び込んでくるのは、大きな航空写真だ。震災前の閖上と震災後の閖上が並び、津波被害の大きさを物語る。
航空写真の右側には旧閖上中学校にあったロッカー棚や非常ドアが展示されている。ロッカーの中には土砂にまみれた掛け時計や学校備品の数々が収められている。閖上地区にあった日常や思い出がロッカー一つ一つに込められている。ロッカー棚と非常ドアに付着した土砂の高さから、中学校へ到達した津波の高さもうかがえる。
左側には、当時の閖上小学校・下増田小学校の児童が心のケアの一環として制作したジオラマ作品が展示されている。第1段階のジオラマは震災前の閖上の町。たくさんの建物と田畑が広がる。第2段階は「あの日」の閖上。津波から逃げる人々や破壊された建築物など児童が実際に見たさまざまな光景と、制作した児童の感想が展示されている。第3段階は未来の閖上の町だ。防波堤やタワーに加えて、レストランや水族館などが並ぶ。
ジオラマの他にも、資料館館内の至る所から、閖上地区の人々が被災後にどのような活動をしてきたのかが見て取れる。本棚には被災前と被災後の閖上を文章と写真で丁寧に記録した冊子が並べられ、壁には被災した子どもたちが作成した歌や、映画のポスターが飾られている。
展示室の奥にある部屋では、「閖上の記憶」の発足や活動内容に関する約10分間の映像を視聴することができる。映像冒頭では旧閖上中学校から撮影された映像が流れる。押し寄せる津波と「逃げて」と叫ぶ声が閖上の町を襲った衝撃的な状況を伝えている。
資料館では館内スタッフから各展示物の説明を聞くことができる。「閖上の記憶」では語り部や閖上案内ガイドによって震災経験、閖上の復興や現在を伝える活動も行っている。