【受験生応援号2022】受験の備え
「脳トレ」の愛称で有名なゲームソフト「脳を鍛える大人のDSトレーニング」は、2005年に任天堂から発売されて以来、大きなブームを巻き起こし社会現象となった。監修者の川島隆太教授は現在、本学加齢医学研究所の所長を務める。受験直前の緊張のほぐし方や過ごし方について、アドバイスをもらった。(聞き手は松本琉太)
緊張時は「速く」何かを
受験のときに非常に緊張して、頭が真っ白になるという経験をすることがたまにあります。そういうときの脳の活動を測ると、驚いたことに前頭葉がほとんど働いていないという状況なんです。
緊張で働かなくなった脳を強制的に動かす方法として、一番簡単なのは「できるだけ速く何かをする」ということです。例えば、問題文の文章だけをできるだけ速く読むだけで、脳が正常に働きだすことがあります。
試験が始まる前であれば、100程度の好きな数字を思い浮かべ、その数からできるだけ速く、頭の中で7を引いていく。この引き算を緊張が解けるまで繰り返すだけで、ずいぶん楽になると思います。このような高速な情報処理は、脳のウォーミングアップにつながるのです。
一方、適度な緊張は集中力を増す効果があるので、ある程度は緊張していた方が良いのも事実です。
朝食はバランスよく
受験前の食事において、一番大切なのは朝食です。バランスよく朝食を食べることがとても大事で、糖質だけ食べるというような食べ方では、脳がよく働かないということが、研究で分かっています。いわゆる定食型の、主食、主菜、副菜がそろっている食事を取ることが重要です。
緊張してあまり食べられなかった人は、完全栄養食と呼ばれている栄養補助食品を食べるだけでもずいぶん違います。朝食が食べられなかった人でも必ず、こういったものを食べてから受験に臨むようにしないといけません。もし当日朝食を食べていない人がいれば、この新聞をみたらすぐにコンビニに走って、完全栄養食を買い、その場で食べてから会場に向かってください。
前日の夕食は、普段と同じように食べるということが大事です。睡眠に悪影響を及ぼすものは食べない方が良いですが、あまり意識しすぎる必要はないかと思います。
胸を張って実力発揮せよ
受験という一大イベントが終わると、その先には「自分の努力次第で何でも手に入る素晴らしい世界」が広がっています。ぜひ、そうした大学生活を送れるよう、実力を発揮してほしいと思います。
これは論文などでは発表していないのですが、私たちの研究では、運悪く希望がかなわなかった場合でも、しっかりと受験勉強に取り組んだ人たちは、そうでない人たちと比べて、脳の働き自体が違ってくることが分かっています。真面目に勉強に取り組むことは、脳のバージョンアップに役立つということが、データで示されているのです。受験という経験自体は、その後の人生に素晴らしい贈り物をしてくれる。だから、まず胸を張って頑張ってください。