【研究成果】筋トレで死亡・疾病リスク減 医学研究科 門間氏ら解析
本学大学院医学系研究科運動学分野の門間陽樹講師らの研究グループは、筋トレの実施が総死亡、心血管疾患、がん、糖尿病のリスク減少につながるとの研究結果を3月1日、本学プレスリリースで発表した。
2020年4月に発足した本研究グループは、疾病、死亡との関連を検討した追跡研究を網羅的に収集し、それらの研究成果を統合解析した。その結果総死亡、心血管疾患、がん、糖尿病のリスクは、筋トレを実施しなかった場合よりも実施した場合の方が12%~17%低いことが明らかになった。
本研究の意義について門間講師は、「『WHO身体活動・座位行動ガイドライン』では主に、筋力と骨密度の増加という健康効果に基づき筋トレを推奨している。一方で総死亡のリスク減少や循環器系、代謝系の疾患予防につながると統合解析により示した点で、本研究は筋トレの健康効果に関する新しいエビデンスだと言える」と語った。
今回新しく判明したのは筋トレによる死亡及び疾病リスクの減少だけではない。総死亡、心血管疾患、がんについては、週30分~60分の範囲で筋トレを実施した場合が最もリスクが低かった。しかし筋トレの実施時間が週130分~140分を超えると、リスクは上昇した。糖尿病については筋トレの実施時間が長ければ長いほどリスクは減少した。
筋トレのやりすぎによるリスク増加に関して門間講師は「本研究は18歳以上の一般成人が調査対象であり、その中でも週130分~140分以上筋トレをする人は少なかった」と語った。続けて「もし筋トレを一定時間以上行う人が、ドーピングをしているアスリートであった場合は、服用した薬の影響も考えられる。先行研究から高強度の筋トレで動脈が固くなり、心血管疾患のリスクが高まるとも考えられる」と推測を述べた。
筋トレの実施時間に反比例する糖尿病のリスク減少に関しては「体内で最も糖を消費する組織が筋肉であるため、筋トレにより基礎代謝が上がり糖尿病の予防につながると考えられる」と語った。糖尿病の予防に関しては、筋トレによるリスクよりも好影響の方が大きいことになる。
今回採用された研究手法は二つ。特定のテーマや検索語(今回は「筋トレ」、「死亡」など)に沿って検索式を作成した後、それらに当てはまる先行論文の質を網羅的に確認する、システマティックレビューと、抽出した複数の先行研究の結果を統合し、より信頼性の高い結果を導出する、メタ解析である。
本研究の成果の活用について門間講師は、「今回の研究を基に、国が筋トレを公的に推奨するようになったり、有酸素運動と筋トレとの併用で健康づくりがより効果的になったりすることを期待したい」と語った。