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【連載】復興再考 〜原発事故後の町づくり〜 ②グリーン未来創造機構 

復興後の未来へ 産学官が連携



 第2回の今回は、東北大学グリーン未来創造機構の機構長、佐々木啓一氏(本学理事・副学長)に話を聞いた。

 同機構は昨年度の設立以来、本学の被災地復興に関する事業の対外的な窓口となってきた。取材で見えてきたのは、復興後の未来像を同じくする組織とつながりを作り、協働していく産学官連携のあり方だった。



本学は地元東北の復興に震災直後から取り組んできた。震災から1カ月後の2011年4月に東北大学災害復興新生研究機構を設立。これを契機に、復興と復興後の持続可能な社会を目指し、研究、社会実装を行ってきた。



 グリーン未来創造機構は、こうした取り組みを引き継いで、震災から10年目となる昨年4月に設立された。機構の活動は、震災復興に関するものに加えて、地球環境と人類が持続できる「グリーン未来」を目指すものとなっている。



福島に新キャンパスを



 福島県の復興をさらに支援していくことを目的に、同機構は福島復興支援室を設置した。これを受け、3月に本学は福島県と包括連携協定を締結。福島の復興、地域活性化などの項目において協力することで一致した。


協定締結式での本学大野総長(左) と
内堀福島県知事 ( 提供 )

 

 福島県との協定締結を受け、本学は福島県浜通り地域に、新たなキャンパスの設置を計画している。新キャンパスでは、現在本学が青葉山キャンパスの一角で建設を進めるサイエンスパークに関連させ、福島県浜通り地域にもサイエンスパーク機能を持った教育・研究活動を展開する計画だ。新キャンパスでは、政府が来年度に設立予定の先端技術開発機関「福島国際教育機構」と提携しながら、月面・宇宙開発やロボット、新エネルギーなどの新たな産業を振興し地域の活性化を目指す。



時期を生かして素早く動く



 本学の復興への取り組みは、さらに広がりを見せている。10月に本学は、トヨタ自動車株式会社と包括連携協定を結んだ。トヨタ自動車は震災以後、東北で復興事業に取り組み、浜通りの浪江町などでも活動してきた。今後は、水素エネルギーを活用した町づくりや、福島の食文化の発展などに関して共同で研究を行う。


トヨタとの包括的連携に関する協定調印式の様子 (提供 )

 

 昨年、グリーン未来創造機構特任准教授に就任したクイズプレーヤーの伊沢拓司さんが所属するWebメディア、QuizKnockとも連携する。同グループが新キャンパスでの学生教育や社会教育に関わっていく構想もある。



 大学を取り巻く状況や社会の要請は刻々と変化する。機構長の佐々木氏は「時期を生かして素早く動き、さまざまなつながりを作っていきたい」と語った。



学際的な取り組み 社会へ還元



 東北大学グリーン未来創造機構は、学内業務のデジタル化による脱炭素への貢献や、SDGsに関連する授業科目の開設による人材育成など、学内の部局・分野を超えた取り組みを主導する。その背景には、設立に至るまでの国際情勢の動向が関係している。



 2015年9月には持続可能な開発目標(SDGs)が、12月にはCOP21でパリ協定が制定され、環境および社会問題にも配慮した「持続可能な未来」を目指す国際的な機運が高まった。



 2020年には新型コロナウイルス感染症の世界的流行が始まり、感染症や災害に耐え得る「レジリエントな社会」の実現が国際的な課題となった。こうした社会的な要請に対応するため、昨年4月、グリーン未来創造機構が設置された。



 同機構は重点的に取り組む分野を、環境・エネルギー問題などに技術面で解決策を提示していく「グリーンテクノロジー」、産学官連携を通した社会変革や格差是正に取り組む「ソーシャルイノベーション&インクルージョン」、災害復興や防災、減災のための研究を実施・実装する「リカバリー&レジリエンス」の三つに設定。本学の研究者から三つの分野それぞれに関連する研究テーマを収集したところ、その数は632件に上った(昨年4月時点)。



 同機構は本学の研究やプロジェクトをホームページなどで発信している。機構長の佐々木啓一氏は、そうした大学の取り組みと、企業や行政、メディアとをつないでいくことが重要だと話す。学際的に取り組む柔軟さと、社会とつながるスピード感が強みだ。


グリーン未来創造機構機構長の
佐々木啓一氏(理事・副学長)




記者の目



産学官連携事業のもたらす地域活性化への期待は大きい。他方、復興を掲げた町づくりの中で、多様な事業と理念が複雑に関係し、事業が大規模化している様子も印象的だ。地域を担う住民の意向が最大限反映されることを願う。

(野澤凜太郎)

福島 5150065751380181900
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