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【ニュース】はやぶさ2 世界初小惑星サンプルから液体の水~サンプルの情報もとにシュミレーションも~

 本学理学研究科中村智樹教授らの研究で世界で初めて地球外天体の回収サンプルから液体の水が発見された。サンプルは小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウから回収したもの。本研究では実際のサンプルの情報を世界で初めて小惑星の形成進化のシミュレーションに取り入れ、リュウグウの形成過程を推定再現した。本研究の成果が地球の水や生命の起源を探る足がかりとなることが期待される。


分析した最大のリュウウグウサンプル
(本学大学院理学研究科中村智樹教授提供)


鉱物中に水を発見


 サンプルを構成している物質は構造に水を含む粘土含水鉱物(*1)や、炭酸塩鉱物、硫化鉄などだった。特に硫化鉄の結晶には、二酸化炭素を含む液体の水が見つかった。小惑星の回収サンプルから液体の水が発見されたのは今回が世界初。この発見により、過去にリュウグウの母天体(*2)に存在した水の化学組成が明らかになった。

リュウグウサンプル中に発見された液体の水
(同氏提供)

 リュウグウのサンプルに含まれる鉱物の組み合わせからは、リュウグウの母天体が形成された当時の環境が推定された。粘土含水鉱物は構造に水を含むため、リュウグウの母天体に水が多く存在したことを示唆する。二酸化炭素を含む水の存在は、リュウグウの母天体が極低温領域で形成されたことを示す。二酸化炭素は極低温の環境でのみ、天体の構成物として取り込まれるからだ。


形成プロセスの再現

 小惑星サンプルの結晶中に見られた液体の水の発見のほかにも、本研究では世界で初めて実際の小惑星サンプルから得た測定値を取り入れた、小惑星の形成プロセスのシミュレーションを行った。リュウグウの形成プロセスは①リュウグウの母天体形成、②氷の融解、③水岩石反応(*3)、④大規模衝突、⑤衝突破壊、⑥再集積の六つの段階を再現した。


 リュウグウの母天体で水岩石反応が起きた根拠は、反応により生成される粘土含水鉱物がサンプルから発見されたこと。反応には天体に取り込まれた氷がとけて水になることが必須であり、水岩石反応より前に氷の融解が起きたと推測できる。


 水岩石反応以後の段階は、大規模衝突、衝突破壊、再集積の三つ。再現に用いられたのはサンプルの硬さや密度、熱の伝わりやすさなどの物性値。天体の衝突のシミュレーションは特に、最初に設定する数値により結果が変わるため、実際のサンプルの情報を使うことで精密な再現が可能になる。


リュウグウの可能性

 リュウグウはかつて太陽から遠い極低温領域で形成した天体の一部である。現在は太陽や地球に比較的近い場所にあり、地球の生命の源となりうる炭素や水、アミノ酸などを豊富に含むC型小惑星だ。リュウグウの調査により地球の水や生命の起源、太陽系の進化史の解明が期待される。


【用語解説】
*1「粘土含水鉱物」粘土水酸基や分子水を構造中に含む鉱物。層状の結晶構造を持つ。
*2「リュウグウの母天体」現在のリュウグウになる以前の大本となる比較的大きな天体
*3「水岩石反応」水を含まない岩石や鉱物の内部構造に水が浸入し、水を含む鉱物が生成される反応。 


<研究に携わった学生のコメント>
 本研究に携わった天野香菜さん(理・博3)と菊入瑞葉(理・修2)に今後の研究への意気込みを聞いた。
天野 リュウグウサンプルの分析結果と小惑星リュウグウの観測結果を紐づけることで、実験室での隕石研究と観測による天文学の懸け橋としたい。
菊入 「衝撃」に着眼点を置いてサンプルを観察し、リュウグウサンプルに残された衝撃の証拠を探し、その経験した圧力を見積もりたい。

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