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【連載】復興再考 ~原発事故後の街づくり~ ③福島イノベーション・コースト構想推進機構

当たり前の生活取り戻す


 浜通り地域の産業を再生するプロジェクト「福島イノベーション・コースト構想」。震災から11年たった今、福島は産業集積による先端技術の開発を通して、産業衰退、人口減少に直面する地域を持続可能な地域へ作り替えていく過程にある。(野澤凜太郎)


福島ロボットテストフィールド (佐賀氏提供)

 福島イノベーション・コースト構想(以下、イノベ構想)は震災で失われた福島県浜通り地域等の産業と雇用の回復を目指すプロジェクト。民間企業を浜通り地域等に集積させ、相乗効果による先端技術の発展を促す。



 イノベ構想では、既存産業の再生に加えて新規産業の育成にも取り組む。重点分野には、「廃炉」「ロボット・ドローン」「エネルギー・環境・リサイクル」「農林水産業」「医療関連」「航空宇宙」の6分野を定めた。「ロボット・ドローン」分野では、屋外用ロボットの大規模開発拠点「福島ロボットテストフィールド」を中心に、地域外からも多くの企業や人材が集まっている。



 浜通り地域等は高齢化や産業の衰退など、日本の多くの地域がこれから向き合う課題に直面する「課題先進地域」。イノベ構想の導く復興はどこへ向かうのか。福島イノベーション・コースト構想推進機構の企画戦略室副主任、佐賀直人氏は復興への思いを語った。



 「元通りに戻すだけでは地域が持続できない。新規産業の力も借りながら地域の課題を解決し、住民の方のもとに、当たり前の生活を取り戻すことが、真の復興だ」



防災事業 求められる「産業助」


 先月10日、福島県富岡町文化交流センター「学びの森」にて、福島イノベーション・コースト構想推進機構の主催するシンポジウム「防災・減災への新たなチャレンジ〜課題先進地福島から起こる新たなイノベーション〜」が行われた。イノベ構想に参画する産学官の識者が登壇し、これまでの防災・減災への取り組みと、復興への展望を語った。



 本学災害科学国際研究所所長の今村文彦教授は、東日本大震災のような広域複合災害に対応するためには、自助・共助・公助に加えて、民間企業が防災・減災に取り組む「産業助」が重要だと強調。他方、利益につながりにくい防災事業の維持の難しさにも言及した。



 民間企業からは、福島県南相馬市の復興工業団地に事業化・実用化拠点を置く、長距離ドローン開発企業「テラ・ラボ」の代表、松浦孝英氏が登壇。災害発生時、ドローンで調査したデータからGIS(地理情報システム)を構築し、被害状況をいち早く発信するシステムを紹介した。松浦氏は持続的な防災システムの運営には、助成金ありきの政府や行政からの委託事業としてではなく、民間企業が主体となってビジネスを展開していくことが必要だと述べた。



 災害対応ロボットの専門家で本学大学院情報科学研究科の田所諭教授は、自身の災害用ロボットの研究・開発の取り組みを振り返りながら、大学の役割は他にない技術の種を作り、企業と共に実現させていくことにあると話した。



記者の目


 持続的な地域の再生には、新規産業の育成が不可欠だ。一方、暮らしの記憶が残る風景を残したい住民の思いもある。行政は何を残し、何を変えるのか住民と対話を重ねる必要がある。そこでは、未来を見据えた地域のあり方が問われている。

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