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【研究成果】曾助教らの研究グループ発表 画像診断AI 診断根拠に懸念 「診断過程の調査も重要」

  本学大学院医学系研究科医用画像工学分野の曾昱雯(そういぶん) 助教らの研究グループは2月28日、医用画像診断のための人工知能(AI)が専門医との所見に判断根拠で食い違いがあることを本学プレスリリースで発表した。AIを臨床現場に導入する上での懸念が明らかとなった。



 近年はAIの発展が目覚ましく、医用画像診断の分野では専門医に匹敵する高い正確性を示すという結果が多く報告されている。しかし臨床の現場でも同程度の正確性を確保できるのか、懸念は依然として存在する。



 今回曾助教らが行った研究では、まず溺死とそうでない死因による遺体それぞれをCTスキャンした画像を、三つのディープラーニングモデルに学習させた。次にAIが注目する領域をマップとして表示し、専門医の画像所見を診療放射線技師が領域として画像化したマップと定量的な比較を行い、モデル根拠の正確性を評価した。



 その結果、今回の学習モデルは90%以上の高い正答率で溺死を分類した。一方、AIの注目領域と、専門医の所見を画像化した領域とは30%ほどしか一致していない場合があると分かった。





 現在、AIによる画像診断の性能は向上しているが、診断根拠の正確性についてはまだ十分な検証がなされていない。曾助教はAIの最たる問題に「診断の決定過程がはっきりと分からないこと」があると指摘する。AIを臨床現場で活用するには、たとえ正答率が高かったとしても「その判断根拠が正しいかどうかも調べ、診断の過程を専門医に近づけていく必要がある」と分析した。



 医用画像診断AIを臨床現場で十分活用できるようにするには、学習データの収集という別の課題もある。



 医療データはプライバシーの観点からアクセスに制限がある。そのため、偏りが出ないようにデータを集めることは容易ではない。だが偏りのあるデータで学習させれば、十分な性能を担保できない恐れが生じる。曾助教は「例えばアメリカ人のデータだけで学習させたAIを日本人の診断に利用してしまうと、普遍的な症状の特徴を分析していないため、誤診を招く可能性がある」と偏りなくデータを集める必要性に言及した。





 さらに、診断に必要な特徴を十分に兼ね備えていない、データとして不十分なものを学習に使用すれば、AIの性能に大きな影響を及ぼしかねない。曾助教も今回の研究で苦労した点として、質の良いデータを十分な量確保することを挙げた。



 曾助教とともに研究を行った同グループの本間経康教授は、臨床現場にAIを導入するには、医療従事者がAIによる判断を批判的に思考できるようにしていく必要があると指摘した。その上で「電子カルテへの入力などAIに任せられるところは任せ、医療従事者が患者と直接対話できる時間を確保していくことが大切だ」と述べた。

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