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【書評】『日本人の異界観』

 「異界」という言葉を聞いたとき何を連想するだろう。あの世、神域、異空間、または異世界?

 本書の内容は、複数分野の研究を通じ日本人の異界観の輪郭を見いだそうとするというものだ。

 掲載されている論文の内容は多岐にわたり、その中には異界とは直接的に関わりがないように感じられるものもあるかもしれない。

 しかし、この世界と異界を隔てる境目を作り上げるのは、人間の世界に対する認識だ。本書を読み、異界とそうでない世界両方に対する認識を深掘りしていくことで、両者の境とその変化をより明確につかめるだろう。

 現代の項目では、アニメ映画、学校の怪談、ツチノコ、狐狸、戦死者の亡霊というような観点から異界に対する感覚の変化を探る。

 近世・近代の項目では、国内での天竺観の変容、明治時代の新聞報道に多く見られた怪異記事の動向、当時広まった遊離霊魂譚の概要や特徴等文献的な内容が述べられる。

 民俗学の項目では、東北地方のオシラサマ信仰や、高知県の民間信仰であるいざなぎ流、猟師にとっての異界といった、今でも伝承が残る異界に関する風俗を主に解説する。

 最後のアジアの項目では、朝鮮通信使から見た日本でのお盆の習俗、古代インドの仏教説話群、沖縄での死者儀礼文化などを論じ、日本の外側から日本の異界観に視線を向ける。  (津波依織)



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