【書評】『ゼロからトーストを作ってみた結果』 トーマス・トウェイツ 梅雨の書評祭り 3/4
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あなたはトースターを作ったことがあるだろうか。これから紹介するのは『ゼロからトースターを作ってみた結果(著:トーマス・トウェイツ 訳:村井理子)』、文字通り「ゼロからトースターを作る」ことに挑戦したイギリスの青年のドキュメンタリーである。
軽妙な日本語訳で読みやすい本書だが、個人的な疑問に始まる挑戦は社会のあり方への考察にまで広がる。トーマスは、トースターの原材料を入手する試みの中で、人が社会、そして他人に依存していることを思い知る。同時に製品の安価さに秘匿された「価格に現れないコスト」を発見したトーマスは各個人、ひいては社会全体が経済と環境の対立に妥協点を見出そうと動くことの必要性を訴える。
本書をきっかけに「個人の無力さ」を認識すると、世界と存在が圧倒的な存在感を持つ。この感覚はぜひあなたに味わっていただきたい。また、あらゆるものが値上がりするこのご時世だからこそ「コスト」に思いを馳せ、社会がどう変わるべきか考えて欲しい。
(柳谷光)