【ネット限定】報道部夏合宿 in 飯坂温泉2「角田豆腐店」
福島市飯坂町湯野。かつては伊達郡に属する湯野町だった。飯坂温泉で有名な旧信夫郡飯坂町とは、一級河川摺上川を挟んだ向かい側にあたる。
ここに、長年地元の人から愛されてきた豆腐店がある。角田豆腐店だ。店主の角田昌歳さんと弟の恭章さんは、豆腐の製造から販売まで、兄弟二人で行っている。この地で生まれ育ち、店を長く続ける中で飯坂温泉の盛衰も目の当たりにしてきた。長く地域に根差して営んでいる角田豆腐店を訪れた。
店を訪れると、ちょうど厚揚げの製造が佳境に入っていた。角田豆腐店では固い豆腐と柔らかいよせ豆腐に加え、揚げ、厚揚げを製造している。現在、店に出るのは主に恭章さんだが、かつては恭章さんと両親、兄、姉、叔母の6人で、豆腐の製造から卸売りまで行っていた。戦前から営業していた豆腐店を、戦後、満洲から引き揚げてきた恭章さんの祖母が受け継いだのだそうだ。客の大半は地元の人だが、飯坂温泉の旅館にも豆腐を卸しているため、その豆腐に引かれやって来る観光客もいるという。
昭和の時代、歓楽街として栄えていた飯坂温泉。駐車場に入りきらない大型バスが、橋を渡ってやってくることもあったという。潮目が変わったのはバブルの頃だ。経済こそ発展したが、東北新幹線の開通や高速道路の整備により、アクセスの良くない飯坂温泉は時代に取り残されたのではないかと角田さんは語る。日本全国で見られる山あいの温泉街の衰退だが、地元住民としての話からは諦念も感じられた。
取材の終盤、角田さんのご厚意で揚げたての厚揚げをいただいた。皮はパリパリとした触感が心地よく、中も熱々、油の味も相まって、今まで食べたことがないほどおいしい厚揚げだった。店頭に並べるためには一度冷やす必要があるそうだが、角田さんは「やっぱり揚げたてが一番だ」と笑う。
角田さんおすすめの食べ方は、豆腐は冷ややっこにして、厚揚げは焼いて食べることだ。宮城県の秋保、鳴子両温泉とともに奥州三名湯にも数えられる飯坂温泉。芭蕉も訪れたという古湯を訪ねた暁には、摺上川の対岸にも足を延ばし、角田豆腐店の冷ややっこを味わってみてはいかがだろうか。
(高須小町、スティーブン・リュウ、平山遼、新村輝海)