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【研究成果】ガラスの局所構造を直接観察 非晶物質の構造に挑む

 本学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の平田秋彦准教授らのグループがガラス物質の局所構造を直接観察することに成功し、その構造が正20面体と面心立方構造の中間の構造となっていることがわかった。




 このことは局所的にはエネルギー的に安定な正20面体に近く、全体的には最密構造である面心立方構造に近いことで局所的にも全体としても安定化されているということを示唆している。






 ガラスの構造が局所的に20面体構造をとることは60年ほど前から予言されていた。しかし三次元空間を正20面体で最密充填することは不可能であり、ガラス構造の局所的な観察が技術的に難しかったため理論のみの議論となっていた。今回平田准教授らのグループは数オングストロームの細さの電子線を試料に照射し、その回折図形から試料の局所構造を推定するオングストロームビーム電子線回折法を用いて金属ガラス(Zr80Pt20)の局所構造の解析を行った。

 通常の回折法では原子数10^23個オーダー全体の平均データを得るのに対し、オングストロームビーム電子回折法では30~50原子ほどの局所的なデータを得ることができる。この解析の結果、ある特定の方向から入射した電子線に対して得られたデータが分子動力学的シミュレーションによって予想されていた歪んだ20面体の回転軸による回折図形とよく一致することが分かった。ほかにも面心立方構造が歪んだものと似た回折データも多く得られ、全体としてはこの二つの中間の局所構造が多く存在することが判明した。また、ガラスのように全体として構造に規則性のない物質はこれまでの結晶学の分野では取り扱えないことも研究が進まない一因となっていた。

 そこで、より柔軟な観点からガラスの構造を検討するため本学理学研究科の松江要助教や小谷元子教授らと連携し実験データをホモロジー解析したところ、局所的構造の歪みの傾向がガラス構造の広い範囲で似通っていることがわかった。このことは局所的な20面体構造の歪みがガラス全体での構造形成に深いかかわりを持っていることを示していると考えられる。

「不規則だと言われているガラスの構造単位を見つけたかった」と平田准教授は述べた。

「ガラスのような複雑な構造を解明するには現在行われている全体での平均的な構造解析と計算シミュレーションに加え、局所的な構造情報を加えた三つ巴で検討していかねばならない。そのためには分野の垣根を越えて数学などを導入することも欠かせない。最終的にはアモルファス系についての体系的な構造解析手法を確立したい」

 今後の展開としてはまず別の金属ガラスやケイ酸塩ガラスなど他のガラスについても解析を行い、局所構造を調べることを行っていくとのこと。また、もう少し広い領域でデータを取りデータのマッピングを行うことで単位構造同士の繋がりについての知見を蓄え、局所構造と全体構造の橋渡しとなる中範囲秩序の解明に取り組みたいと平田准教授は語った。
研究成果 2698167636860309603
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