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【研究成果】心の傷に漢方の力 低リスク強みに普及へ

 本学大学院医学系研究科の髙山真准教授のグループが、東日本大震災により生じた動悸や不眠、感情不安定の症状の治療に漢方薬、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)が有効であることを明らかにした。研究結果から、柴胡桂枝乾姜湯はPTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療薬として有用性があると示唆された。

 柴胡桂枝乾姜湯は柴胡、桂皮、甘草などの7種の生薬を含む漢方薬。日本国内では感冒や耳鳴り、更年期障害、不眠症などの治療薬として処方されている。本研究以前にPTSDやPTSD様症状に対して処方したという報告はなかった。  

 東日本大震災後、ストレスから新たに動悸、不眠、感情不安定などの精神症状を引き起こして受診する人が増加。多くの患者はPTSDの三大中核症状である再体験、回避、過覚醒を有していた。これらの患者の治療に漢方薬が有効であることを証明しようと髙山准教授らは研究を開始した。

 研究は2011年7月から2012年3月までに実施された。震災が原因でPTSDを発症させたと疑われる患者43名を漢方グループ21名と待機グループ22名に割り付けた。漢方グループは柴胡桂枝乾姜湯7・5グラムを一日三回に分けて二週間内服し、待機グループは治療を受けずに二週間待機した。症状の変化はPTSDの診断基準に用いられるアンケートの点数(高得点であるほど重症)で評価した。評価の結果、漢方グループでは、内服前後で平均点数が49・6点から25・5点へと改善した。特に大きく改善したのは、気が付くと震災のことを考えてしまったり、震災時の夢を見てしまったりといった再体験の症状であった。一方、待機グループでは43・7点から39・3点とほとんど変化がなかった。


 大災害後、心の傷に対して早期治療をすることでPTSDの発症を防ぐことも可能だ。漢方薬は抗うつ剤や抗不安剤に比べ、依存性が低く、副作用が少ないため、医師は低リスクで処方できる。今後は治療薬として普及するための情報発信が必要となる。


研究成果 8639535817816002392
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