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【エッセイ】受験後体験記 ~私と受験と、時々、趣味~

 試験終了後は達成感でいっぱいだったが、翌日になると無気力感が私を包み込んでいた。試験前、入試が終わったらやりたいと思っていたことがあれほどあったのに、試験後それらに対する熱意が全く湧かなくなった。私は浪人生なのだが、昨年の受験では感じなかった不思議な感覚だった。

 こういうとき、趣味があると本当に助かる。私の趣味はずばり鉄道である。しばらくして「総武線に乗ってどこかに行こう」という思いが出てきた。すると、それまで全く動こうとしなかった身体が、僕の「動け」という命令を聞いてくれたのかとても軽くなったのだ。
 


 僕は部屋を出た。とりあえず総武線に乗った。何も考えずただ外を眺めていたら、いつのまにか新宿駅に到着していた。そこから湘南新宿ラインに乗り換え、気の向くまま向かった先が大宮の鉄道博物館だった。デゴイチ・485系・EF66系・103系・20系、0系と名車だらけ。しかも1階では宇都宮線や高崎線を間近で見られるし、3階では東北新幹線と上越新幹線が見られるのだ。19歳の人間とは思えないまるで幼稚園児のようなはしゃぎ具合で私はその日を過ごした。

 これによって勉強する気になったというわけではないが、無気力感は完全に消えた。後期もこの調子なら受けられる、そんな感じだ。ここから約2週間、僕は再び受験生になった。

 前期試験発表当日、朝から気持ちが悪かった。医学部ではないし二浪はできないという思いがプレッシャーになっていた。一応、予備校に行くためいつもの勉強道具をいつものバッグに入れ、予備校に行くため総武線に乗った。しかし、やる気は全く出なかった。

 ここでもまた趣味に助けられた。電車に乗っても勉強のやる気が出るわけではないが、気分が楽になるのだ。総武線で中野駅まで行き、中央線に乗り換えて高尾駅に向かった。そこで京王に乗り換え明大前駅まで乗車し、そこから井の頭線で渋谷駅へ。さらに銀座線と丸の内線を乗り継いでお茶の水駅に向かった。予備校に行く気分ではなかったので、ご飯を食べて本八幡の寮に戻ることにした。この過程でお金をいくら使ったのか全く把握していない。勉強道具をバックに入れたまま僕は小旅行を楽しんでいた。

 本八幡には戻ったが合格発表の3時まであと1時間も残っていた。そこで本八幡駅では降りず、そのまま津田沼駅に向かった。そこで時間つぶしをして、2時40分ごろに部屋に戻り発表を待った。この20分が地獄だった。吐き気がひどかった。すでに私立は失敗の連続で後期試験も受かる可能性はないに等しい。もうここしかなかったのだ。

 3時になった。ネットはすぐにつながった。自分の番号を見つけるのに少し苦労したが……あった。間違いない。報われた。受験に勝った。両親、金沢にいたとき通った塾、金沢の友人、高校の先生、予備校など報告するべき場所は山ほどあった。

 それから数日して、金沢に帰郷する日になった。東京駅で新幹線に乗り座席に座ろうとしたとき、肩にかけていたバックの紐が切れるという出来事があった。このバックは僕が高一の時に購入し、浪人生になってからは毎日のように使っていた愛着のあるバックだ。通勤地獄でダメージを受け続け、もともと肩紐は切れかけていたが、合格して切れるとは……役目を終えた、そんな感覚だった。いつもありがとな。


 以上が僕の春休みです。読者の皆さんの朗報を待っています。
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