【研究成果】過去の津波データ 石から解明 ~津波石の残留磁気を手がかりに~
https://ton-press.blogspot.com/2014/07/blog-post_13.html
本学理学研究科地学専攻の佐藤哲郎(博士課程前期2年)と中村教博准教授らの研究グループは、沖縄県石垣市宮良湾におけるサンゴ礁起源の津波石(※1)の残留磁気を解析し、個々の津波石から津波石が移動した回数とその移動年代を明らかにすることに世界で初めて成功した。この磁気を利用した手法は、世界中に分布している津波石から過去に起こった津波の発生時期とその規模を解明できる可能性がある。
一般に多くの岩石は形成時に微細な磁石を含むことから磁気を帯びている。この磁気は方位磁石と同じように地球の磁気(地磁気)の向きと一致して北の方向を記録する(図)。しかし、津波で岩石が生まれた場所から、津波石として、沿岸に打ち上げられると、津波石がもつ残留磁気の方向と地磁気の方向が一致しなくなる。その後、数十年以上の時間が経過すると、津波石の残留磁気は徐々に地磁気の方向を示すように緩和しはじめる。
これまで、サンゴはカルシウムと炭素からなる骨格をもつため、残留磁気を持たないと考えられていた。しかし、研究の対象となったサンゴ礁起源の津波石は、磁気の向きを記録していた。一方、サンゴ表面の骨格中の放射性炭素(※2)を測定することで、これまで津波によってサンゴが沿岸に打ち上げられた年代が推定されていた。それによると、石垣島には過去2500年間に8回の津波が来ていることが判明していた。
しかし、放射性炭素年代測定は、沿岸に打ち上げられたあと、津波石が移動したかどうかは区別できない。もし仮に津波石が複数回の津波で移動していたら、現在の津波石の位置から過去の津波の規模を推定すると、その規模を過大評価することになる。そこで今回研究グループは、津波石の残留磁気の向きを分析した。そして古典的な磁性の緩和理論を用いて年代を計算することで、津波石がいつの津波で何回動いたかを明らかにした。この結果は、放射性炭素年代測定による結果と一致した。
今後の研究方向について、佐藤さんは「東北地方、ひいては世界の津波石を利用して、古文書や言い伝えだけでは伝わらない過去の津波の発生状況を明らかにしていく」ことを挙げている。数千年後も風化しない岩石を用いた手法を確立することで、津波の歴史を未来へ残していくことが目標だ。
※1津波石……津波によって海岸に打ち上げられた1m~数mの岩石のこと。
※2放射性炭素年代測定……動植物の体内に取り込まれる炭素14が死後約6000年で半減することを利用して年代測定をする方法。
一般に多くの岩石は形成時に微細な磁石を含むことから磁気を帯びている。この磁気は方位磁石と同じように地球の磁気(地磁気)の向きと一致して北の方向を記録する(図)。しかし、津波で岩石が生まれた場所から、津波石として、沿岸に打ち上げられると、津波石がもつ残留磁気の方向と地磁気の方向が一致しなくなる。その後、数十年以上の時間が経過すると、津波石の残留磁気は徐々に地磁気の方向を示すように緩和しはじめる。
これまで、サンゴはカルシウムと炭素からなる骨格をもつため、残留磁気を持たないと考えられていた。しかし、研究の対象となったサンゴ礁起源の津波石は、磁気の向きを記録していた。一方、サンゴ表面の骨格中の放射性炭素(※2)を測定することで、これまで津波によってサンゴが沿岸に打ち上げられた年代が推定されていた。それによると、石垣島には過去2500年間に8回の津波が来ていることが判明していた。
しかし、放射性炭素年代測定は、沿岸に打ち上げられたあと、津波石が移動したかどうかは区別できない。もし仮に津波石が複数回の津波で移動していたら、現在の津波石の位置から過去の津波の規模を推定すると、その規模を過大評価することになる。そこで今回研究グループは、津波石の残留磁気の向きを分析した。そして古典的な磁性の緩和理論を用いて年代を計算することで、津波石がいつの津波で何回動いたかを明らかにした。この結果は、放射性炭素年代測定による結果と一致した。
今後の研究方向について、佐藤さんは「東北地方、ひいては世界の津波石を利用して、古文書や言い伝えだけでは伝わらない過去の津波の発生状況を明らかにしていく」ことを挙げている。数千年後も風化しない岩石を用いた手法を確立することで、津波の歴史を未来へ残していくことが目標だ。
※1津波石……津波によって海岸に打ち上げられた1m~数mの岩石のこと。
※2放射性炭素年代測定……動植物の体内に取り込まれる炭素14が死後約6000年で半減することを利用して年代測定をする方法。