【連載・津波被災地を走る】②仙台空港~仙台港
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※長らく連載を休止しており、申し訳ございませんでした。
10月下旬から11月にかけて、全6回をお送りする予定です。
第1回の様子はこちらからご覧ください。
5月上旬、仙台市内は観光客や帰省者で賑わっています。天気は快晴、最高気温は18℃。絶好のサイクリング日和です。
「津波被災地を走る」第2回は、前回の終着点である仙台空港から北へ約30㎞北上し、仙台港までクロスバイクを走らせました。
10月下旬から11月にかけて、全6回をお送りする予定です。
第1回の様子はこちらからご覧ください。
5月上旬、仙台市内は観光客や帰省者で賑わっています。天気は快晴、最高気温は18℃。絶好のサイクリング日和です。
「津波被災地を走る」第2回は、前回の終着点である仙台空港から北へ約30㎞北上し、仙台港までクロスバイクを走らせました。
海岸では堤防の建設が行われていました。5mほどのコンクリートの壁が南北へ長く続いています。「津波に負けない粘り強い」堤防とのこと。震災以前のものを補強しているようです。
堤防に登ると、吸い込まれそうな青空と、キラキラとした海が視界に飛び込んできました。あの日すべてを飲み込んだ海は、静かに輝きを放っていました。
堤防から内陸を望みます。まばらな松林の向こうに空港が見えます。
手前には、津波で流された木々がいまだに積み重なっているのが見て取れます。
堤防と空港の中間地点に、1件の民家を見つけました。津波で1階部分が空洞になっています。
現在は名取市に移住された家の持ち主が、東日本大震災を後世に伝えるために、この場所に震災遺構として残しているとのことです。
人々にぬくもりと安堵を届ける「家」が、今は震災の爪跡を後世に伝える「遺構」になっている…。荒涼とした大地にポツリとたたずむ一軒の家は、家主を失った悲しみのメッセージを我々に投げかけているようでなりません。
県道に入り、北上を開始します。
沿道では、農地の除塩や盛土の作業が行われています。
次なる目的地は名取市閖上地区。
ところが、工事による行き止まりにぶつかりました。
進路を変更し、名取市の内陸部である美田園(みたぞの)地区を経由して閖上(ゆりあげ)地区に入ることとしました。
・名取市
JR東北本線沿いを走ること5分。
プレハブが並ぶ仮設商店街が見えてきました。
「閖上さいかい商店街」です。
名取市の閖上・下増田地区で被災した24店舗が店を構えています。2012年の2月にオープンしました。名前には、事業の「再開」と、お客さんとの「再会」という二つの意味が込められています。
美味しそうな匂いに誘われて訪れたのはこちら。
「お惣菜工房 匠や」さんです。
目移りしてしまいますが…名取市の特産品「仙台セリ」を使った春巻きを選びました。
揚げたてアツアツ。サクッと頬張ると、鮮やかな仙台セリがたっぷりと詰まっています。
初夏を連想させる独特の野趣ある香りが、とっても爽やか。
続いて立ち寄ったのは、こちらのテントです。
「閖上たこ焼き」と書かれています。
1本100円とのこと……ん? たこ焼きなのに「1本」??
購入して納得しました。
3個のたこ焼きが1本の串に刺さっているのです。
モッチリふわふわな食感の生地が特徴。
甘味と酸味が程よく効いた、フルーティーなソースがたまりません!!
良い意味でたこ焼きの概念が覆りました。
これは、たこ焼き界の革命児か……?
震災前までこのたこ焼きは、50年もの間、閖上地区で親しまれてきた味なのだそうです。
しかし、津波でお店が被災。たこやきを作り続けていた方は津波の犠牲になりました。
「あの味を忘れてはいけない」
そう感じたファンが立ち上がり、味を再現。昨年の夏に開業したということです。
津波で街が変わっても、変わらず心に残り続ける味がある。ふるさとの味を後世に伝えていこうとするお店の方々に、胸を打たれました。
きっと、「さいかい市場」の皆さんは、共通の想いをお持ちなのではないかと感じました。
ごちそうさまでした。
再び沿岸部に向かって自転車をこぎます。
目指すは名取市閖上地区。毎週日曜日は、「ゆりあげ港朝市」が開かれると聞いています。
道中の菜の花は満開。殺風景な休耕地に彩りを添えていました。
住宅街に近づくと、校庭で遊ぶ小学生を見かけました。
「閖上小学校」です。津波による浸水被害で、現在は使用停止となっています。
ここの体育館は、津波で流され、持ち主の見つかっていないアルバムや位牌を保管する場所になっているということです。
沿岸部へさらに3分ほどのところには、閖上中学校があります。
時計は震災が起こった「午後2時46分」を指したまま止まっています。
校舎の前には、亡くなった14人の生徒を悼む慰霊碑が。
目を閉じ、それぞれの在りし日の姿を思い浮かべました。
次なる目的地、ゆりあげ港朝市に着きました。
毎週日曜日と祝日に、朝6時から13時にかけて開かれています。30年間以上続く歴史ある朝市です。
津波で大きな被害を受けたものの、わずか3週間で部分的に営業を開始。700人以上の犠牲者が出た閖上地区で、住民同士の再会の場としての役割も担ったといいます。
2013年12月に、全面再開を果たしました。
鮮魚店を中心に、かまぼこ屋、肉屋、八百屋など、50以上の店舗が軒を連ねています。
新鮮な食材や宮城県の名産品が一堂に会する様は圧巻です!
バーベキューができるコーナーも設けられています。
あたりには魚介類の焼ける香ばしい匂いが……
「ちょっとお兄さん、見ていかないかい?」
声をかけられ、立ち寄ったのは「まるつね鮮魚店」さん。
「今朝あがったばかりのマガレイがおすすめだよ」
女店主の石畑範子さんが、ニコニコ笑顔で説明してくれます。
新鮮なカレイの目は凛と澄んでいます。今にも動き出しそうなくらいです。
威勢のいい声に背中を押されて、購入することにしました。
3枚でなんと500円! や、安すぎる!
袋に氷をたくさん詰めて頂きました。人と人との心が触れ合う市場ならではの温かなやり取りです。
帰宅後に、大切に頂きます。
さて、お土産も買ったことだし、一気に仙台港まで自転車を走らせよう!
そう考えていると……
どーん!
ピッカピカのDAHON製折り畳み自転車を持った男性に出会いました!
「君は学生かい?」
「は、はい! 東北大学新聞の企画で宮城県沿岸部をクロスバイクで走っています」
「そうかい。僕は自転車で各地を回って動画を取り集めているんだ。どうだ、一緒に走らないかい!?」
男性の名前は「gereizi(ガレージ)」さん。
山形にお住まいのガレージさんは、震災ボランティアや自転車旅行で頻繁に三陸地方を訪れているそうです。今日は名取市周辺のツーリングに来たとのこと。
ここで会ったが何かの縁。
仙台港までご一緒させて頂きましょう!
仙台港へ向け、自転車を走らせます。
「ついていく」とおっしゃっていたガレージさんでしたが、気付くと私が後方に。とにかく速いんです!
グイグイと前へ進んでいくガレージさんの後を追うため、必死にペダルをこぎます。
・仙台市若林区
走っているのは仙台市若林区です。
津波で広大な農地が浸水し、震災から3年以上がたった今でも塩害に苦しむ田畑が存在します。
40分ほど直線を走ると、キリンビール仙台工場が見えてきました。
仙台港周辺は、様々な企業の工場が集まる工業団地になっています。
目的地まであと少し!
・仙台港
本日のゴール地点である仙台港では、大きな漁船が私たちを出迎えてくれました。港は多くの釣り人で賑わっています。
昼下がりの海風が、汗ばんだ肌に心地よいです。
最後にガレージさんと記念撮影!
「君たち若い世代が、震災を後世に伝えていかなければならないよ」
「はい! そのお言葉、胸に刻みます。」
「僕はもう還暦を迎えた身。これからも気ままに旅を続けるよ」
ええ! 還暦!? 定年を迎えられた方の体力、スピードとは思えないです……。恐れ入りました。
またどこかで、お会いできる日を楽しみにしています。
1日中自転車をこぎ続けてへとへとになりながらも岐路に着いた私。もちろん夕飯は……
閖上港朝市で購入したマガレイです。
次回は仙台港から松島までを走ります。
(文責:立田)