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【研究成果】宇宙背景放射に新発見 ~大きな「ゆらぎ」存在~

 本学学際科学フロンティア研究所の津村耕司助教らのグループが、JAXA宇宙科学研究所、米国カリフォルニア工科大学や韓国天文宇宙科学研究院等の研究者らとともに実施したCIBER実験(Cosmic Infrared Background ExpeRiment)により、近赤外線の宇宙背景放射にこれまでの予測を超える大きな「ゆらぎ(まだら模様)」が存在することを発見した。宇宙にある未知の天体の存在について新たな仮説を必要とする新発見である。
  宇宙背景放射とは、天体の観測データのうち、星や銀河などが写っていない天域の明るさのことである。近赤外線の波長域には、太陽系内からの明るさ、私たちの銀河系内の明るさ、そして銀河系外からの明るさが含まれている。今回発見された近赤外線の「まだら模様」は、普通の星や銀河などによる影響だけでは説明がつかず、宇宙には未知の赤外線光源が大量に存在することを示している。

  今回の成果は、CIBER実験のうちで撮影した赤外線観測画像から得られたものである。CIBER実験とは、近赤外線での宇宙背景放射を観測するためのNASAによるロケット実験プロジェクトである。専用に開発した望遠鏡をNASAの観測ロケットに搭載し、打ち上げて観測を行う。
  このような観測で得られる天空からの近赤外線放射のうち約8割は太陽系に由来するため、銀河系外からの成分だけを抽出するのは難しい。しかし、明るさの空間分布パターンの「まだら模様」を検出することで、太陽系の影響を取り除きやすくなり、観測対象である銀河系外からの放射成分を抽出することができる。分析の結果、観測された「まだら模様」の大きさは、知りうる限りの全ての銀河を考慮した予測値の2倍以上も大きいことがわかった。
  検出された「まだら模様」のうち、小さな角度(*)では手前の銀河の空間分布が、1度に近い最大角度では、前景の銀河系内の塵に由来する放射の空間分布が主な「まだら模様」であるとして説明できる。一方で0・1度ほどの角度に現れる大きなまだら模様は、既知の天体の影響では説明できない。この原因はまだ明らかにはなっていないが、これまでに得られた赤外線天文衛星「あかり」の成果などを考慮し、津村助教らは新たな仮説をたてた。仮説は、銀河の周囲には、ダークマター(暗黒物質)が広く分布するハローと呼ばれる領域に、銀河どうしの過去の相互作用により放出された大量の星々も存在し、それらの星の光が今回観測された大きな背景放射「まだら模様」を作り出す、というものである。この仮説が正しければ、比較的近い銀河のハロー内ですらまだ観測されていない未知の星々があることになる。
  「CIBER実験ではこのような重要な結果が得られたが、最終的な結論のためにはより精度の高い観測が必要だ」と津村助教は語る。現在、CIBER実験チームに新たなメンバーを加えた体制でCIBER―2が計画されている。この実験では、ロケットに入る最大口径の望遠鏡が用いられる予定であり、現在観測装置の開発に力が入れられている。
  (*)……星と星の見かけの距離(離角)は角度を用いて計測する。
研究成果 1545775211184377412
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