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果実高糖度化に新手法 他の農作物へ応用期待かかる

 本学生命科学研究科の草野友延教授らの研究グループが、果実を高糖度化する新たな手法の開発に成功した。本成果はドイツの生物多様性・気候変動研究センターのトーマス・ベルべリッヒ博士および本学農学研究科の金山喜則准教授らとの共同研究によってなされた。研究はトマトで行われ、トマト果実中の糖の総量を野生株トマトの1・5倍にすることに成功した。



 
 草野教授らは、植物の低温処理や老化時に発現するbZIP型転写因子をコードする遺伝子の研究を行っていた。これらの遺伝子は、bZIPタンパク質をコードする領域の上流に進化的に保存された短いペプチドをコードする領域(上流ORF)が存在することが特徴である。高ショ糖濃度に反応して下流のbZIPタンパク質の翻訳が抑制される。その際上流ORFが存在することが必要となる。この現象はSIRTと呼ばれている。SIRT現象はショ糖濃度が高くなり、植物全体の成長バランスに悪影響を及ぼすことを防ぐための制御機構と考えられる。研究グループは、タバコでの先行研究から上流ORFがショ糖センサーとして機能することを明らかにしてきた。
 
 そこで本研究では、トマトからSIRTを示すbZIP遺伝子を同定し、ショ糖濃度を感知する上流ORFを含む領域を削除し、果実特異的に発現するトマト形質転換体を作出した。SIRT現象に着目し、果実の糖度を上げる方法に成功したのは本研究が初めてである。
 
 従来の果実高糖度化法は、トマト植物に海水濃度の塩処理をする、あるいは乾燥処理をする等、植物にストレスを与えて果実の糖濃度を高めることが行われていた。こうした手法は熟練を要し、また当然ながら植物の生育を抑制するという短所があった。本手法では形質転換したトマトの後代の果実でも高糖度の遺伝的形質が維持されていた。さらにトマト植物の生育やトマト果実の大きさに悪影響が見られないという優位な点もある。
 
 今回の成果を受けて、今後は実用化に向けた研究が期待される。草野研究室の児島征司助教は、「研究室でうまく育っても、農業の現場で使えるかは別問題」と実用化の難しさを語る。
 
 本手法は転流糖がショ糖である他の植物の果実糖度を高めることも可能にするという。また、バイオエタノール生産用のトウモロコシの高糖度化への応用が期待できる。
研究成果 4402165336039866534
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