読み込み中

【働くこととは】⑲―「自然派ビュッフェレストラン 六丁目農園」代表 渡部哲也さん

 今回の「働くこととは」は、「自然派ビュッフェレストラン 六丁目農園」代表の渡部哲也さん。六丁目農園は障害福祉サービス事業所で運営しており、就業者の約6割が障害者である。「人間は生まれたからには、役割を持っている」。仙台随一の繁盛店のオーナーに、仕事の極意を伺った。




―六丁目農園を始めたきっかけは

 オンリーワンの企業経営がしたいと思ったからです。常に勝敗が求められ、ナンバーワンを目指さなければならないビジネスの世界に疲れてしまっていたんですね。それとは対極にある障害福祉サービス事業を経験したいと思っていました。

 障害者に合った飲食店経営の形態が、ビュッフェでした。「一つの作業に専念できる」「レジがワンプライス」「接客が必要ない」「失敗したら出さなければいい」など、臨機応変な対応が苦手な障害者でも訓練を積み、適材適所で働くことができます。障害のある人が主役となって働く六丁目農園には、安倍首相やキャロライン・ケネディ元駐日米国大使など、多くの著名人も訪れるようになりました。

―障害者と共に働く上で大切なことは

 障害がある人のほとんどは、いじめを受けた経験があります。他人から期待されず、何より自分自身に期待していません。人間は生まれたからには、必ず役割があります。その人の可能性を信じることがとても大切です。

 誰かの役に立っているという実感を得るのに、仕事は不可欠です。自分がしたことに対する「ありがとう」の言葉が、自己承認につながると思います。

―渡部さん自身の変化は

 他人のできないところを許せるようになりましたね。店内でピザを焼いている発達障害の男性は最初、生地に触ることすらできなかったんですよ。成長を焦らず、じっくり待つこと。従業員から教わり学ぶこともとても多いです。

―どのような学生時代を過ごされましたか

 高校3年生の時に、父が経営していた会社が倒産し、50億円近い負債を抱えました。生活は激変し、今まで住んでいた大きな家を手放すことにもなりました。悔しかったですね。世間に対するコンプレックスから、父のリベンジを果たすために一獲千金を目論むようになりました。

 しかし、気持ちは焦るばかりで、地位や収入、名誉だけを過度に追い求め、失敗を繰り返していました。自分に筋が通ってなく、ブレてばかりだったと思います。

―東北大生へひとこと

 いわゆる「ゆとり世代」の若者は、私たちの世代よりはるかに優秀です。思いやりがあり、価値観もしっかりしている。ちゃんと地に足をついて生きています。ただ失敗や挫折に打たれ弱い面があります。ぜひ臆せず、興味があることにはとことん打ち込み、自分の役割を見つけていってください。

 また私は学生の時、日本から逃げるように、オーストラリアへ語学留学に行きました。南の島に滞在したこともあります。現実逃避したかったのだとは思いますが、見聞は深まりました。「旅と読書と人との出会い」。これらのことも大切にしてほしいです。

―渡部さんにとって働くこととは

 自分の生きている役割を表現すること。自分の存在理由は、仕事を通して分かってきます。今働いている人にも、ぜひそのことを感じてもらえたらうれしいです。
働くこととは 2008192905652148933
ホーム item

報道部へ入部を希望する方へ

 報道部への入部は、多くの人に見られる文章を書いてみたい、メディアについて知りたい、多くの社会人の方と会ってみたい、楽しい仲間と巡り合いたい、どんな動機でも大丈夫です。ご連絡は、本ホームページやTwitterまでお寄せください。

Twitter

Random Posts