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【紀行】厳戒令前後のカナダを歩いて ~平和な街に起きた異変~

 昨年11月のことである。筆者は海外に行きたいという衝動に駆られ、ダーツの矢を世界地図に向け投げた。そこで示された国は「カナダ」。これから続く文章は、3月いっぱい――のはずだった――筆者、いや私が留学ついでにカナダを歩いて考えたことである。ざっと新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けた厳戒令前後のカナダについて、思ったことを述べる旅行記に付き合っていただければ幸いだ。



 まず到着したのはバンクーバー。碁盤の目のようなダウンタウンをひたすら歩くと、正統派な家系ラーメンから、ギリシャ料理、カザフスタン料理まで各国料理のレストランが並んでいた。ただ私は一人でレストランに入るだけの頑丈な心は持ち合わせていなかった。一応感染症に注意していたこともあり極力テークアウトしていこうと決めていたのと、私が”How are you?”と聞かれて”I’m fine, thank you, and you?”と、たとえ頭が痛くても条件反射で答えてしまう中学生以下レベルの英語力しか持ち合わせていないからだった。

 さて、そういうレストランの通りを歩いていると、マスクをつけていなかったのはもちろんのこと、公園でハグしている人、ガールフレンドを家に誘う人など、今見れば『濃厚接触』そのものを行っている人を見かけた。この頃でも濃厚接触が注目されていた中での日本と比較すると平和だなあと思う他なかった。

 ただこの頃から観光地に向かうと環境が一変していた。例えば写真のトーテムポール群のあった公園。奥へと歩けば歩くほど人通りが少なかった。いたとして自転車でのツーリスト。観光本によると人でにぎわうはずのこの公園が、平和な街中での異変を知らせているようだった。

 その次に着いたのがカナダの首都オタワ。到着時には厳戒令は出ておらず、プーティン(フライドポテトに少し甘いソースをかけたカナダ料理。それをカナダ料理と言うのかすこし悩んだがそうらしい)のお店では人でにぎわっていた。ただ、私は疲れていたので到着時はTim Hortonsというカナダで有名な喫茶店でコーヒーをテークアウトし、ホテルに着いてすぐ寝てしまった。そのときに厳戒令が発令されていたことも知らずに。

 朝起きて、オタワの街を歩くとすぐに異変に気がついた。博物館系の観光地は閉まり、全てのレストランがテークアウトのみになり、他の宿泊客がホテルに着くなり手指を消毒し、ホテルの従業員がN95(マスク)を装着しだし、オタワの人々が人と距離を置いて歩くようになっていた。しかもカナダに到着して一度も見なかったマスクを装着し。正味1日でここまで人が変わるのかと思う瞬間だった。平和なバンクーバーの香りは少なくともオタワでは消え去っていた。

 もともとの計画を変更し、実際にはその翌日帰国予定だったが、これ以上留学ついでの旅を延ばしていたらどうなっていただろうか、ふと今でも考える。現在まで無症状で引きこもりながら。これはこれで貴重な体験だが、二度と起きて欲しくないものである。とにかくこの非常事態が収束することを願うばかりである。
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