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原案は本学非常勤講師
本学で教職論の授業を担当している非常勤講師の齋藤幸男さんの著書『生かされて生きる~震災を語り継ぐ~』を原案とした映画「有り、触れた、未来」が3月から上映開始となる。震災から10年後の宮城県を舞台に、「命」と向き合い、前に進もうと葛藤する人々の様子を描く本作について、監督たちに聞いた。
本映画は、齋藤幸男さんの著書『生かされて生きる~震災を語り継ぐ~』を原案に、「永遠の0」や「ブレイブ-群青戦記-」など数多くの映画に携わってきた山本透さんが監督および脚本を担当。本作のために集まった、総勢22名の若手俳優からなるプロデューサーチーム「UNCHAIN10+1(アンチェインイレブン)」と共に、企画から資金集め、制作まで全てをゼロから行った。主演の桜庭ななみさんをはじめ、手塚理美さん、杉本哲太さんら豪華俳優陣が出演している。
原案の齋藤さんと、「UNCHAIN10+1」を山本監督とともに旗揚げした女優の舞木ひと美さんは実の親子。山本監督の周囲で若手俳優らの自殺や家族の死が重なる中、彼のワークショップ生である舞木さんが同書を薦めたことをきっかけに、映画制作に踏み切った。
山本監督は全てのロケを宮城県内で行おうと、2021年3月11日に舞木さんの案内で齋藤さんを訪ねた後、1カ月ほどで脚本を書き上げた。その後半年ほどで協賛金を集めたり、ロケ地を探したりした。何百社にも連絡をした怒涛の期間を、「子どもたちの未来を思う多くの大人に、異例のスピード感で出会えたため、ここまで走ってこられた」と舞木さんは振り返る。
脚本も務めた山本監督は、「『ありふれた』を漢字では『有り触れた』と書くことを知っている人は少ない。今はコミュニケーションが断絶されてしまっているが、コロナが収まった先で、周囲の人と支え合い、触れ合い、前に向かって歩いていけるように、一言ずつ『有り、触れた、未来』とタイトルに思いを込めた」と語る。
2月17日にはせんだいメディアテークで上映会が行われ、山本透監督と舞木ひと美さん、齋藤幸男さんが参加。「100年、200年、1000年先も、生きづらさを感じることは必ずある。自殺を止める至極シンプルな方法は、死ぬ直前に隣に人がいること。この映画を見て、誰かと寄り添いたいと思ってもらえれば」と、作品に込めた思いを監督自ら語った。
映画は全て宮城県内で撮影され、東松島市の「青い鯉のぼりプロジェクト」の様子も描かれている。3月3日から宮城県で先行上映、10日から全国で公開開始となる。
【映画概要】
交通事故で恋人を亡くした元バンドマンの女性(桜庭ななみ)。大災害で家族を失い、生きる希望を無くした少女(碧山さえ)とその父親(北村有起哉)。将来に不安を感じながら「魂の物語」を伝える若手舞台俳優たち(舞木ひと美ら)。「命」と向き合ったいくつもの物語が複雑に折り重なり、互いの傷を癒し、前に進もうと葛藤する様子を描く。
【UNCHAIN10+1】
「UNCHAIN」は鎖がつないで離れないこと、「10」は震災から10年経ったことが由来。「+1」には「未来へ」という思いや、本作の象徴である鯉のぼりが柱に対して垂直に泳いでいる様子も表現している。
【青い鯉のぼりプロジェクト】
東日本大震災後、宮城県東松島市大曲浜で毎年開催されている鎮魂のプロジェクト。震災で5歳の弟を亡くした伊藤健人さんが、がれきの中から見つけた青い鯉のぼりを自宅に掲げたことが始まり。