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震災のひずみ 地震活動活発化 ~2月、3月 大型余震相次ぐ~

  今年2月と3月に東北地方の太平洋沖を震源とする大きな地震があった。震度6強を観測した地点もあり、被害を受けた人もいただろう。幸い大きな津波は発生しなかったが、いまだに東北地方は地震活動が活発な状態にあることを、人々に改めて知らしめた。東北地方太平洋沖地震の余震はどのように起こり、いつまで続くのか。理学研究科地震・噴火予知研究観測センターの松澤暢(とおる)教授に伺った。




 2月13日に福島県沖で、3月20日に宮城県沖で起こった地震は、東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震の余震とされている。どちらも3.11をきっかけにプレートへの力のかかり方が変化してひずみがたまったことが原因だった。前者は地中深くまで潜った太平洋プレート内部で、後者は太平洋プレートと陸側のプレートの境界で起こった。


 一口に3.11の余震といってもそのメカニズムはさまざまだ。2月13日に起こった福島県沖の地震は、陸側のプレートの下に潜り込んだ太平洋プレート内部にひずみがたまり、それが解放されて起こった。このタイプの地震は地中深くで起こるため、断層のずれの大きさの割には大きな津波は起こりにくいとされる。


 3月20日に起こった宮城県沖の地震は、太平洋プレートと陸側のプレートの接する面がずれたことによるものだった。この地震の震源周辺には、3.11の本震のときに滑った領域と本震後にゆっくりと滑った領域が存在している。そのゆっくりとした滑りが10年間続いたことによって新たなひずみが生じ、そのひずみが限界値に達したとき、プレート境界が急にずれ、3月の地震が起こった。


 以上が2月と3月に起こった地震のメカニズムだが、これ以外にも注意すべき3.11の余震があると松澤教授は警告する。その一つがアウターライズ地震と呼ばれるもので、これは日本海溝より海側の太平洋プレートで起こる地震だ。この地震は震源が陸から遠く、揺れ自体は大きくない。しかし、震源が比較的浅いうえに、断層が力を直接的に海へ伝えるようなずれ方をする。その結果、大きな津波が発生しやすいという危険性を持つ。つまり、震度が小さかったので津波は来ないと油断したところに、大津波が押し寄せるというような地震だ。


 これらの余震の原因となるひずみは、3.11でプレート上に急激に動いた部分と動かなかった部分があったことに起因している。3.11でひずみが解放された領域では地震活動が収まってきている。しかし、3.11によってひずみが生じた部分ではむしろ地震活動が活発化しており、依然として注意が必要だ。


 では3.11の余震はいつまで続くのか。先月1日、気象庁が東北の太平洋沖で起こった地震について、「東日本大震災の余震とみられる」という表記をやめると発表した。これは3.11の余震がもう起こらないということではない。余震というものは100年たっても起き得るもので、3.11については、向こう200年は余震が起こるとするモデルもある。気象庁が表記を取りやめたのは、もともと東北地方の太平洋沖では3.11に関係ない地震も多かったことと、余震であっても大きな被害が出る可能性は十分にあるにもかかわらず、余震という言葉に防災意識が左右されてしまうという判断に基づいている。


 2月と3月の地震と同程度かそれ以上の規模の地震が発生する可能性は今後も十分にある。津波に対する警戒も緩めてはならない。引き続きしっかりと防災対策を行っていく必要がある。




【おわびと訂正】

本記事図中の「プレートにかかっている力」を表す矢印の向きが、「内陸地殻内地震」と「アウターライズ地震」について逆向きとなっておりました。おわびして訂正いたします。
2021.7.8






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