【一言居士】 －2022年5月－

 「楽観主義者はドーナツを見、悲観主義者はドーナツの穴を見る」。『幸福な王子』で知られる作家、オスカー・ワイルドの言葉だ▼心待ちにしていたミスタードーナツの新商品。その発売初日に店へと向かった友人は、空っぽのショーケースを見てがく然とした。早すぎる完売。ドーナツを愛する人々の力を甘く見ていた報いである。しかし、いずれは新商品だけでなく、通常のドーナツでさえ食べられなくなる時が来るかもしれない▼ロシアのウクライナ侵攻の影響を受け、小麦の値上がりが加速している。ロシアの小麦生産量は世界第３位。国際市場に与えるダメージは大きい。価格高騰は小麦以外の原材料、エネルギー資源にも及び、1970年代以来の商品市場ショックが見込まれている。そして、遠い異国の地で起きている争いに、大学生の食事情をも脅かされている。ドーナツの穴を見ざるを得ない状況が続く▼国際情勢によって、ドーナツの穴は広がるばかりである。人々がドーナツ本体に目を向けられるようになる日が来ることを切に願う。（文責・木村）