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【とんぺー生の一冊】若者の苦悩 みずみずしく 『終わらない歌』宮下奈都

  隣の東北大生はどんな本を読んでいるのか、気になったことはないだろうか。今回は林希美さん(文・3)に、お薦めの本を紹介してもらった。


 宮下奈都作『終わらない歌』=写真=。同氏作『よろこびの歌』の続編で、主人公である少女たちの高校卒業後の姿が描かれる。少女たちの苦悩が等身大に描かれ、誰か1人の登場人物には必ず共感できる点が魅力だと林さんは話す。


『終わらない歌』宮下奈都


 お薦めの場面は、本学の2016年度一般入試前期日程にも使用された一節。早希はソフトボールの選手だったが、けがで断念し、今はトレーナーを志す。しかし、登場人物の早希は自分より頑張れない人のため、自分が働くことに対して疑問を抱いていた。ある日、早希は同級生だった千夏のミュージカルを見に行くこととなる。最初は友人の舞台を微笑ましく見ていたが、最後の千夏の演技は圧巻で、衝撃を受ける。「千夏のスライダーはすごかったね」。早希は舞台の感動をそう表現する。


 スライダーとは、突然大きくカーブする決め球のこと。林さんは「『千夏のスライダー』って何だろう。『自分だけの必殺技』というだけじゃない気がする。直球とスライダーが彼女らにとってどういうものなのか、模範解答を参考にしながら考えていきたい」と話す。「言語化が難しいけど重要な点を、あやふやにせず言葉で説明させようとする。受験生の時に出会ったこれらの過去問から、こんな素敵な価値観が存在する大学なんだなと思って、東北大学を選びました」。

 

 この本は、自分で選んだはずの進路に熱意を持てない人や虚無感を覚えている人に薦めたいと語る林さん。「心のエネルギー切れを起こしている人の癒やしになればと思います」と笑った。

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