【研究成果】ラニーニャ現象 定説覆す ~2年目の日本 真冬にならず 修士2年・西平さん~
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ラニーニャ現象の2年目は、日本は寒冬にならない――。本学理学研究科の西平楽さん(理・修2)と杉本周作准教授は4月8日、ラニーニャ現象に関する新視点を発見したと発表した。従来の定説を覆すもので、今後の気候予測や研究への活用が期待される。
ラニーニャ現象は、熱帯東太平洋での水温が平年より低下し、その状態が長期間持続する現象。水温が上昇する「エルニーニョ現象」と合わせて、世界的な気候に大きな影響を及ぼす現象として知られている。ラニーニャ現象時は西太平洋の水温が上昇し、海面からの水分蒸発量が増えることで、東アジアの大気循環にも影響が生じる。一般に冬の日本では、西高東低型の気圧配置が強まることで、寒冬になると言われている。
1年で終息することが多いエルニーニョ現象に対して、ラニーニャ現象は数年にわたって継続することもある。西平さんは、日本が寒冬になるという定説に対し、2年目以降も同様なのかを疑問に感じ、学部4年生だった2020年に研究を開始した。
西平さんらは、直近70年分の観測データ解析と気候シミュレーション実験を行い、ラニーニャ現象時における冬季の気候を解析。その結果、1年目の冬は定説通り、日本付近の気温が平年より約0.4度低下することを確認した。一方でラニーニャ現象が継続する2年目の冬の日本付近は、平年並みの気温となることを発見した。
現在は20年夏に発生したラニーニャ現象が継続している。実際に日本では、1年目が寒冬となった一方で、昨年から今年にかけての2年目の冬(12月、1月)は定説とは異なり、北日本や西日本を中心に平年よりも暖かくなった地点が多かった。
今回の発見について西平さんは「今までの画一的な評価が覆る結果なのかもしれない」と話す。従来の定説と異なる視点を提示した結果であるだけに、社会的、学術的な影響も大きいとみられる。杉本准教授も結果に対しては「驚いた」と振り返り、「現在行われている数値予測などの結果の妥当性を検証する、一つの指標になるだろう」と指摘している。
今回の発見についての論文は4月1日、米国科学雑誌「Geophysical Research Letters」のオンライン版に掲載された。著者は西平さんで、共著者は杉本准教授。本学が発表したプレスリリースで西平さんの名前がはじめに書かれているのも、「西平さんが『第一著者』。私は『共著者』」という杉本准教授の考えによるものだ。
ラニーニャ現象の発生や全世界的な気候変動の過程は、明確に分かっていないことも多い。西平さんは、気候の予測が社会の関心の的だとした上で、「ラニーニャ現象が続くのかどうかの判断はまだ難しく、プロセスも解明できていない。冬以外の季節についても研究を重ねていきたい」と今後の研究にも意欲を示している。