読み込み中

【ネタ記事】報道部員の不毛な一日 24時間神経衰弱

  裏側に広げたトランプをめくってペアを作り、記憶力を競うゲーム―神経衰弱。ばかを言え、たかが1プレイ十数分で神経が衰弱してたまるか。人を弱らせきってしまう条件、それは「同じことをやり続けて生じる飽き」に他ならない。24時間神経衰弱をやり続けて、身も心も粉々にしてやろう。筆者の思いつきに、5人の不幸な男たちが集まった。    (小平柊一朗)


最下位に与えられた
具なし塩だけスパゲッティ

 ルールは簡単。24時間経つまで神経衰弱を繰り返すだけ。なお、特定の組のカードを取ると「休憩券」が獲得でき一定時間休めるようになる。また企画中の食事は、神経衰弱の得点順に金額やメニューが決まっている。



 10月8日午後7時、対戦開始。まずは6人で夕食の争奪戦だ。フィールドに悲観的な雰囲気はない。小学生ぶりの神経衰弱の懐かしさに包まれた空間で唯一、最年長3年生のMが異様な緊張感を放つ。彼はコソ練犯だった。皆が記憶法を確立しようと試行を繰り返す中、他プレイヤーの数倍ものカードを覚えて圧倒。夕食までの1時間では2位に大差をつけて優勝した。



 うなだれる5位Nと最下位Aの前で、1位と2位は吉野家の牛丼を、3位はココスのハンバーグを注文し、4位の筆者はコンビニ弁当を買ってきた。それを横目に5位は食パンを魚焼きグリルに放り込む。バターしか塗れない決まりと知りながら、英気を養わんと1斤全部を焼いた。目に余る愚行。吐き気をこらえて完食し、無駄な根性を見せた。最下位Aは感情を失った目で一言「ほんとやばいっすよ」。彼が食すは具なし塩だけスパゲッティ。ゆで時間も失敗して踏んだり蹴ったりである。地獄の対岸で牛丼を愉しむMが彼に1枚の肉を差し出すと、「一生ついていきます」。



 しかしAは屈せず、復讐に燃える。再開後の元気いっぱいのフィールドで、彼は文字通り神経を研ぎ澄ました。再開後の成績ならMと並ぶほどの成長を遂げ、以降Mと首位争いを繰り広げた。



 それから12時間が経つと、筆者は一つ前の手番でめくられたカードすら満足に記憶できなくなり、昼食時点で5位。一方、2位でモスバーガーを注文して見事雪辱を果たしたAは、6位のNに「パスタ楽しみだねえ」。Nは意に介さず、不敵な笑みを浮かべて小麦紐を口に運ぶが「ゴムチューブですもん」と一言。絶望を隠せていなかった。



 昼食後、6人中4人が休憩券を使って長時間の眠りについた。残る2人は人数が減れば取り分が増えることに気付き、ゲームを高速周回。2時間近く続け、100点差を縮めて上位を独占した。



 リモートで様子を見てくれていた部員によるカラオケ配信や多額の投げ銭(架空)に感謝、混乱しつつ手を動かして、命からがら最終試合を終えた。最後にきっちり1位に返り咲いたMは計916ペア、最下位は計676ペアだった。



 記録が済むとたちまち現実に戻される。翌朝から授業という不合理に、筆者は企画の発案者を呪う。起床から34時間、焦点の合わない目で、禍根の残る自室をぼうと眺めて誓った。こんな企画は二度とやらない。すぐにシャワーを浴びて眠った。



 目が覚めると、時刻は午前10時を回っていた。

ネタ記事 8758834852626008358
ホーム item

報道部へ入部を希望する方へ

 報道部への入部は、多くの人に見られる文章を書いてみたい、メディアについて知りたい、多くの社会人の方と会ってみたい、楽しい仲間と巡り合いたい、どんな動機でも大丈夫です。ご連絡は、本ホームページやTwitterまでお寄せください。

Twitter

Random Posts