信じる誤情報の訂正記事避ける行動 解明 ~本学 乾教授も研究に参加~
名古屋大学大学院工学研究科・田中優子教授をはじめ、本学大学院情報科学研究科・乾健太郎教授も参加する研究グループが、信じている誤情報に対する訂正記事のクリックを選択的に避けるというオンライン行動の特徴を明らかにした。研究の背景や今後の展望について、乾教授に話を聞いた。(山野咲)
■訂正記事避ける 43%
研究では、独自のクリック行動分析指標を用いて実験を行った。その結果、「信じている誤情報に対する訂正記事」を選択的にクリックするグループが参加者の57%、選択的に避けるグループが43%だった=図=。訂正情報を選択的にクリックするグループでは「信じている誤情報に対する訂正記事」の42%をクリックするのに対し、訂正情報を避けるグループはわずか7%しかクリックしなかった。
乾教授はこれらの結果について「サンプルは世代が偏らないように人口分布に従ってとっていることを考慮すると、訂正情報を避ける人の割合がここまで多いのは意外だった」と話す。さらに「信じているものを否定することを避けるバイアスの具体的な表れ」だと分析する。
■背景に誤情報の拡散
研究の背景には、インターネット上に誤情報が拡散されることで、災害時や政治の場面で悪影響を与えているという現状がある。昨今ではChat GPTなど、誤情報を作り出すこともできる技術が登場し、このような問題は今後増えることが予想される。
一方で、インターネット上に存在する誤情報については、「ファクトチェック」の動きもみられる。「ファクトチェック」とは現実に照らして情報の真偽を判断することで、ファクトチェック記事やそれを制作する団体が増えてきている。
ファクトチェックの記事を見た後についての研究はこれまでにもあった。しかし、自分が信じている情報の訂正記事がある場合に、まずその記事を見るかどうかを調べる研究は今回が初の取り組みである。
■人と技術 両面の研究
選択的に訂正記事を避ける傾向のある人にどのように記事を届け、記事を見てもらった先で納得してもらうにはどのような働きかけや説明ができるのか。乾教授は「人について調べる」研究と「技術をつくる」研究の両面からのアプローチが必要だと語る。「今回の実験は『人について調べる』研究の第一段階。その結果をもとに、AI技術を用いて訂正情報をどう届けられるのか、どうサポートできるのかを模索していく」