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【ニュース】佐々木晴香助教「アジアの科学者100人」に ~夜間の気管支ぜんそく悪化 メラトニンの関与解明~

 本学歯学研究科の佐々木晴香助教が、7月に発表された「アジアの科学者100人」2023年版に選ばれた。体内時計をつかさどるホルモンのメラトニンが、気管支ぜんそくの病態に関与する仕組みを解明した業績が評価された。アジアの科学者100人は、シンガポールの科学誌『Asian Scientist Magazine』が16年から毎年発表している。科学、技術、工学、数学の4分野で顕著な功績を残した科学者や、前年に国内賞や国際賞を受賞した科学者が選出される。今年は日本人から、佐々木助教を含む12人が選ばれた。



ささき・はるか
1994年、秋田県生まれ。
今年3月に本学歯学研究科博士課程を修了。
4月から同研究科病態マネジメント歯学講座
歯科口腔麻酔学分野助教を務める。



 佐々木助教は今回の選出を受け「本当に驚いた。研究内容を世間に知ってもらえる機会になってうれしい」と感想を述べた。今年3月に歯学研究科博士課程を修了したばかりの佐々木助教。今回の受賞の大きな理由は、博士論文の内容だ。「本当の研究者人生はここからがスタート。今までの研究を活かし、自分独自のテーマを持って研究に取り組みたい」と意気込みを語った。



 本研究では気管支に着目しているが、自身の専攻は歯科口腔麻酔学という、歯科治療での全身麻酔や鎮静法に関する学問だ。本研究で取り扱った気管支ぜんそくは、全身麻酔をかける際に大きなリスクとなる。佐々木助教は学部生時代の臨床実習で、全身麻酔中にぜんそく発作が起きて命の危機に陥る症例を目の当たりにしたという。気管支ぜんそくは一般的に知られる病気だが、重篤化で最悪死に至る。日本でも年間で約1800人がぜんそくで死亡している。



 「ありふれた病気であるぜんそくでの死亡を防げていない現実にショックを受けた。気管支ぜんそくの病態解明と新規創薬につながる研究がしたく、本研究を始めた」



 アジアの科学者100人への選出で、業績が評価された研究は「メラトニンMT2受容体を介した気管平滑筋収縮増強機構の解明」。人間の体内時計をつかさどるメラトニンが、気管平滑筋の収縮に関与するメカニズムを明らかにした。気管平滑筋が収縮すると気管の中が狭くなり、咳や呼吸困難で特徴づけられる気管支ぜんそく発作を引き起こす。



 気管支ぜんそく発作が頻発する時間と、メラトニンの血中濃度が最大になる時間がともに、午前4時頃ということが研究背景にある。メラトニンは脳の松果体から分泌され、メラトニン受容体は主に脳に発現するが、腎臓や血管平滑筋などの末梢組織にも、特異的に発現することが分かっている。本研究では、気管平滑筋におけるメラトニン受容体の発現や、気管支ぜんそく発作が生じる作用を調べた。



メラトニンにより気管支ぜんそく症状が悪化するしくみ


 メラトニンやメラトニン受容体を特異的に活性化させる薬剤を、気管平滑筋細胞に投与した結果、メラトニンMT2受容体(注1)を介して、cAMP(注2)産生作用の抑制と、アセチルコリンによる細胞内カルシウムイオン濃度の上昇作用の増強が見られた。気管平滑筋細胞内でcAMPが減少またはカルシウムイオン濃度が上昇すると、気管平滑筋が収縮し、気管支ぜんそく発作が起こる。



 本研究の成果からメラトニンMT2受容体の働きを阻害する薬が、気管支ぜんそくの新規治療薬となることが期待される。また気管平滑筋以外に気道上皮などにもぜんそくの病態は生じる。「ぜんそくの病態も気道炎症や、気道過敏性などが他に挙げられる。メラトニンによる他のぜんそくの病態への影響を解明し、新たなぜんそく治療薬の創薬基盤確立につなげたい」と佐々木助教は今後の展望を示した。



(注1)メラトニンMT2受容体
メラトニンの受容体の中でも、体内時計を調整する機能を持つ受容体。


(注2)cAMP(サイクリックAMP)
細胞外からの刺激を細胞内に伝える、セカンドメッセンジャーの一つ。

研究 7245507279644754543
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