「国際卓越研究大」候補に東北大 公的基金運用で研究力強化へ
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文部科学省は先月1日、大学ファンドの運用益を通じて世界最高水準の研究力を目指す「国際卓越研究大学」の初の認定候補に、東北大学を選定したと発表した。研究力強化や大学の統治体制の改革に向けた本学の戦略が、体系的かつ実効性のあるものと評価された。文科省の有識者会議が新たに付した条件を満たせば正式に認定され、来年度から政府による助成が開始される。期間は最長25年間。
審査の観点は研究力向上に向けた方策にとどまらず、大幅な資金増を実現できる事業・財務戦略や、大学全体の統治体制の変革にあった。今年3月末までの初回公募で申請した10大学について段階的に審査が進められ、6月には本学と東京大、京都大の3校が現地審査の対象校となった。
本学は体制強化計画として3つのコミットメント(公約)を軸に6つの目標と19の戦略を制定した=図1=。各計画は認定期間を通して進めるが、正式な認定に合わせて準備・実行できることは現時点から始動する。文科省には新たな研究体制と、大学全体の統治改革に向けた体系的な戦略などが評価された。一方、民間企業などからの研究資金の受け入れ額を25年で約10倍以上にする目標については「従来の成長モデルの延長線上では困難」と指摘し、戦略の深掘りや見直しを求めた。なお資金獲得の手段について、本学総長・プロボスト室は取材に対し「現段階では授業料の改正は計画していない」と答えた。
●体制改め研究時間確保
本学は新たな研究体制の確立を計画した。現行の研究室制から、教授、准教授または助教が独立環境で研究グループを構築する体制に改める。これまで教授らが行っていた教育や管理業務などには専門職スタッフを配置して研究時間を確保しつつ、テニュアトラック制度を全学的に展開するなど若手研究者の独立も支援し両立させる。研究力向上の具体的指標として、向こう25年間で論文数を約3・5倍、トップ10%の論文数を約9倍に増やすなどとしている。
「稼げる研究」への注力が研究の自由度を損ねる懸念に関し同室は、研究力強化の計画は自然科学分野に限らず人文・社会科学分野でも同様とし、「日本学のように本学が世界をリードする分野は多く、資金を生み出しにくい分野の発展も図ることが総合大学の責務だと認識している」と立場を明らかにした。
●院生を雇用 英語公用語化も
修士課程学生を約1・5倍、博士課程学生を約2倍に増やす。本紙の取材によると、計画初期では研究室に在籍する大学院生をジュニアリサーチフェロー(補助研究員)として雇用することも検討しているという。博士課程修了予定者には、キャリア支援の一環でリサーチフェロー(研究員)や専門職スタッフへの就職も準備する予定だ。
国際化についても、教員から学生、事務職員に至るまで全方位で推し進める。留学生や研究者で外国人比率3割を目標とする上、英語を公用語化し、英語による授業を学部で5割以上、大学院で100%とする。
大学院の変革に伴い、学部についても入学者選抜から大きく改革する。選抜試験を全て総合型選抜(現行AO入試)へ移行するほか、優秀な留学生を引き込む戦略を整える。さらに入学者選抜の業務から、研究者を解放する仕組みを確立するという。
●「総合戦略会議」 新設へ
「世界の有力大学は従来型の高等教育機関の枠組みを超えた経営体として機能を拡大している」と同室。本学でも教学機能と経営機能それぞれの権限・責任を明確化する。また経営戦略など重要事項の決定や、業務執行の監督といった権限を持つ「総合戦略会議」の新設を計画。構成員の過半数を占め議長も務める学外委員には国内外を問わず有識者や同窓生、学生代表などを選出し、多様なステークホルダー(利害関係者)との協働を重視した大学経営を目指す。
今後の学生に対する情報開示については「最終的に認定となれば適正な方法で共有するよう検討していく」とした。
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