【研究成果】「6G」向け新技術開発 透過型メタマテリアル
本学大学院工学研究科の金森義明教授らの研究グループは、次世代通信「6G」向け電波偏向制御技術である透過型メタマテリアルを開発した。
世界では既に2030年代の実用化を目指して、第6世代移動通信システム「6G」を見据えた研究開発が始まっている。「5G」用のミリ波に比べて、「6G」で使用されるテラヘルツ波は波長が短い。情報を高速で伝えられる一方、障害物に遮蔽されやすく、その進行方向を制御して、遮蔽エリアに信号を届ける技術が求められていた。金森教授らの研究グループは、低損失誘電体のシリコン製のサブ波長構造で構成される透過型メタマテリアルを新たに開発し、それを用いて、テラヘルツ波偏向器を製作した。
従来報告されていたメタマテリアル反射板による電波の偏向制御技術は、反射板自体が電波を遮蔽し、裏側に電波を送ることはできなかった。本研究では、透過型の偏向制御板のため、偏向器の裏側の狙いの方向へ電波を届けることができる。シリコンはテラヘルツ波を吸収しないため電力効率が高く、また屈折率が大きい。さらに、小さな穴を大量に開ける半導体微細加工技術との相性が良く、シリコンの深堀りエッチング技術により、高精度な量産加工が可能である。透過型メタマテリアル、テラヘルツ波偏向器の開発完了時期は3年後の見通しである。
昨年6月1日、金森教授を拠点長として、国内初のメタマテリアルを専門とする「メタマテリアル研究革新拠点」が設置された。将来の医療、バイオ、農業、食品、セキュリティなどへの社会実装を目指して、メタマテリアルのセンサーなどの研究を加速させている。