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【インタビュー】「自分という人間を育んで」文学研究科・横溝博教授

 高校の授業やメディアなどを通し日本の古典作品に関心を持った人も多いだろう。大学で日本古典文学を学ぶ魅力などについて、本学大学院文学研究科・文学部の横溝博教授に話を聞いた。(聞き手は藤野こころ)


よこみぞ・ひろし
1971年、東京都生まれ。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業。同大学院文学研究科日本文学専攻博士後期課程単位取得退学。信州大学助手、早稲田大学助手などを経て2019年より現職。



―研究内容は
 平安時代から鎌倉時代にかけて、王朝物語がどのように展開し、受容されたのかについて研究しています。個別の物語に加え、日記文学や和歌文学、源氏物語の注釈書も扱っています。これらの文芸の担い手は主に女性でしたが、彼女たちはジャンルの垣根を越えて活動していたので、研究でも各分野を一体のものとして捉えたいと考えています。


―研究の魅力は何か
 作品を通して、歴史に埋もれた当時の人々の息遣いや思いを感じとれることが、醍醐味だと感じています。作品から浮かび上がる人間味のあるドラマにはとても共感させられますし、そのような文学作品から学んでいくべき点、すくい取っていくべき点は多いのではないでしょうか。


―日本古典文学の中でも特に中世王朝物語を選んだきっかけは
 多くの古典作品に触れる中で、ふと今伝わっているもの以外にも、物語は存在するのか疑問に思ったんです。王朝物語についての文学史の記述は、『源氏物語』で終わることが多いです。しかし、実際は散逸物語や、あまり紹介されることの少ない『源氏物語』以降の、平安後期から鎌倉時代に書かれた王朝物語などには素晴らしい作品が数多く存在しています。平安時代の作品だけでなく、できるだけ多くの作品を読み続けたいという思いは、研究を続ける原動力となっています。


横溝教授私物。『物語二百番歌合』、『風葉和歌集』、『源氏物語歌合』を収録する


 

―本学で研究を進める良さは
 本学日本文学研究室には、文学テクストの表現を細部まで丁寧に探究するという伝統があります。この方法が、私にとても合っていると感じています。附属図書館に所蔵されている貴重な書物の数々にも、古典研究者として大きな魅力を感じています。文学部には26の専修がありますが、他専修の先生方との交流から、新たな知見を得ることも多いですね。


―日本文学の分野において、高校までの学びと大学での学びにはどのような違いがあるか
 高校では、教科書を通じてさまざまな作品に出会えますが、大学では、その原典となっている一次資料や文献に直接触れることができる点が大きな違いです。本物に触れる体験が、大学での学びの魅力だと思います。


―数多くの社会課題に直面している現代社会において日本文学を研究する意義は
 人文学が対象とする過去の遺産は、現代社会の課題を解決する導き手となったり、人々を勇気づけたりするような事柄が内在されていると思います。社会問題などに対して人文学の知見がすぐに効果を発揮するとは限りません。しかし、課題解決に向けた社会の要請に応える力を確かに有していると感じています。


―国際化が進む大学教育。その中で日本文学を研究することをどのように捉えるか
 現代日本人よりも、古典語の微妙なニュアンスを理解している外国の方は多いです。また、古典文学で描かれる繊細な美意識に親しみを感じている読者は世界中にいます。そういった方々にさまざまな情報を発信し、共に探究していく。本学が今後推し進めるべき重要なテーマだと思います。


―本学を志望する高校生へのメッセージ
 本学は、それぞれの分野で卓越した研究成果をあげる、世界でも有数の大学の一つです。他の大学では味わえない経験を積めるなど、自分の可能性を広げられる環境が整っています。高校生の皆さんには、ぜひ本学で、自分という人間を育んでいってほしいと伝えたいです。
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