【研究】バンド演奏 健康促進に 高齢者の認知機能を改善
東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター(センター長 瀧 靖之)の品田貴光助手らと株式会社池部楽器店の共同研究により、楽器未経験の高齢者がグループで音楽セッションをすることで脳と心の健康状態が改善すると確認された。
本研究によって楽器未経験の健常な高齢者にセッションの効果があることが初めて判明し、音楽セッションにおいて全般的な認知機能、言語記憶や活気、活力と呼ばれるような心理機能が向上することがわかった。
個人での楽器演奏が認知機能や心理指標に良い効果を与えることは、従来の脳科学や心理学の研究によって明らかにされている。しかし、グループでのバンド演奏による脳と心の健康への影響は解明されていなかった。
楽器演奏をするには、複数の脳領域を同時に使う高度な活動が必要になる。①楽譜を見る(視覚野)→②楽譜を一時的に覚える(前頭前野)→③楽器を弾く(運動野)→④自分の演奏を聴く(聴覚野)→⑤自分の演奏にフィードバックするという流れだ。演奏で脳を高度に扱うことで、脳の健康維持、増進に効果がもたらされると考えられる。
別の研究では様々な余暇活動がある中で音楽活動は、感情的な部分でより有益な健康効果が得られると示唆されている。また、楽器の練習を重ねて上達すると、自信がついて自尊感情や自己効力感が高まると考えられている。これらの効果により心の健康に影響が与えられている可能性がある。
1人での楽器演奏による効果との違いとしては、気分状態の心理指標において、活気、活力の項目に効果が見られたことが挙げられる。神経伝達物質のドーパミンが音楽を聴く際に多く分泌される傾向が、グループ演奏でより強く表れた可能性が考えられているが、今後さらなる解明が求められる。
バンド演奏が認知心理指標等に与える効果が明らかになることは、現在バンドを組んでいる、あるいは組みたいと思っている人びとや楽器業界といった多方面にとって素晴らしいと考え、研究に取り組んだという。
今回の研究では、楽器未経験の健康な高齢者において音楽セッションが脳と心の健康の維持向上に寄与する可能性が示された。品田助手は今後について、音楽や楽器業界による音楽セッションの入門プログラムやコースの充実化、だれでも楽器を身近に触れることのできる場所の確保などを進めて、音楽セッションを気軽にできる環境整備を検討実施していくことが求められると思うと答えた。