【博士課程支援】新制度に 「薄く広く」支援対象拡大 予算大幅増
本学は今年度より、博士課程学生への総合的な支援パッケージ「東北大学高等大学院LEAPプログラム」を実施する。従来の「選抜制の経済支援」から「原則、全員を対象とした経済支援」へ方針を転換した。確実性のある経済支援を打ち出すことで、博士課程への進学率を向上させる狙いがある。一方、支援を受ける博士課程学生からは、突然の変更に戸惑いの声が聞かれる。(平山遼)
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▼新制度導入の経緯
本学の博士学生支援は2024年度まで、国の「SPRING事業」の補助金によって実施されてきた。しかし24年12月、本学が国際卓越研究大学(卓越大)に認定されたことに伴い、同補助金の交付が終了した。そのため25年度は、SPRING事業の方針を継承した本学独自の経済支援「AGS RISEプログラム」を暫定的に運用していた。
従来のSPRING、RISE両制度では、経済支援が選抜制だったことが課題となっていた。支援を希望する学生の半数以上が不採択となり、支援を受けられなかった。近年博士課程への進学率が上昇していたこともあり、支援を受けられない学生が増えていた。
また25年6月、SPRING事業は支援方針の見直しが行われ、留学生への生活費支援を行わないことになった。
これに対し、今年度から始まるLEAPプログラムは留学生と日本人学生を区別することなく、国籍を問わず生活費を支援することを最優先に制度を設計した。原則として全ての博士学生を支援する方針を掲げ、支援対象を従来の900人規模から1700人規模へ大幅に拡大した。
支援対象の拡大に伴い、博士学生の経済支援に必要な予算額も大幅に増額される。昨年度26億円だった予算額は、今年度9億円増の約35億円を見込む。
▼新制度の概要
新制度は、①対象となる全ての学生に年額127・2万円の研究奨励費(生活費)を支給②特に優秀な学生を対象とする学位プログラム所属の博士学生には年額240万円の研究奨励費を支給③学位プログラム所属の博士学生および博士課程に在籍する全ての日本人学生の授業料を全額免除④RA、TA等での給与支給を拡充⑤国際会議での発表等を対象に公募型研究費支援を実施⑥博士学生の多様なキャリアパス開発に向け教育プログラムを拡大――の6点で構成される。
本学の大学院教育を所管する高等大学院機構は、本紙の取材に対し、新制度のメリットとして「原則として全ての学生を漏れなく支援対象とすること」「修士課程のうちから進学後の経済的な見通しが立つこと」を挙げた。
従来の制度は選抜制だったため、博士課程への進学を検討する段階では支援を受けられるか不透明だった。「新制度では支援対象を全ての博士学生とすることで、不採択によって進学後に支援を受けられない状況を排除した」と説明する。
制度の運営を担当する本学大学院教育推進センターの梶田諒介特任助教は「博士課程の在籍中は、目先のことにとらわれず自分の研究に時間を使える貴重な期間。就職難のイメージが一般的にあるが、産業界は専門性とマネジメント能力に長けた博士人材を求めている」と博士課程への進学を勧める。
▼支援額減額を巡り
支援対象が拡大した一方、1人当たりの支援額は昨年度と比べて減少した。文部科学省が行うSPRING事業は月額18万円(年間216万円)の生活費+1年当たり34万円の研究費を支給し、RISEプログラムでもほぼ同様の金額を支給していた。LEAPプログラムの支援額は月額10万6千円だ。
同機構は、従来の支援方式を「一部の学生に限定された手厚い支援」と指摘した。全ての博士学生を支える基盤的な支援へと方針を転換し、進学後の生活を見通せる博士学生全体の環境の整備を重視したと強調する。
月額10万6千円(年間127・2万円)の支援額は、仙台市における一般的な学生の年間生活費相当を踏まえた設定だ。今後は博士学生を対象としたRAの予算拡大に向け、民間資金の活用や各部局との連携を強化し、支援額の増額を目指す。
なお、昨年度にRISEプログラムを受給していた学生については、今年度も昨年同様の生活費支援を行う。また本学は、卓越大認定25年目となる2049年に、学生1人当たりの平均経済支援額を年間300万円まで引き上げる目標を掲げている。
▼公募型研究費支援
RISEプログラムでは採択された学生全員に年間34万円支給されていた研究費が、LEAPプログラムでは公募型研究費支援に変更された。公募型研究費支援は申請上限額を40万円に設定し、国際会議での発表にかかる旅費等の諸経費を支援する。
支援用途については、海外渡航費のみでなく、発表に必要な研究活動に伴う物品購入費や、ポスター発表の印刷費などにも使用可能とした。同機構は「学生の多様な研究スタイルに対応できるよう柔軟に設計した」と説明する。
また変更理由は「卓越大の研究力強化を図る一環として、博士学生が国際的な舞台で研さんを積み、研究成果を世界に発信し、海外の研究者との積極的な交流を後押しするため」とした。
安藤晃・大学院教育推進センター長は、本紙の取材に「研究内容によって必要な研究費は異なるため、従来の一律型研究費支援には良い面と悪い面があった」と述べた。
一方、本学の理系研究科に在籍する博士学生は「研究費なしでどう成果を上げろというのか疑問だ」と不満を持つ。
▼留学生の授業料支援
LEAPプログラムでは、学位プログラム所属の留学生約100名と全日本人学生の授業料が免除される。その一方、学位プログラムに所属しない外国人留学生約530名は授業料免除を申請できない。この変更により、新たに授業料の支払いを求められた学生もいる。
安藤氏は授業料について「本来は全ての学生が支払うべきもの」と述べた上で、「財源は限られている中で、諸外国と比較して低調な日本人学生の博士課程進学を促進するため(日本人学生の)授業料支援を行うことにした」と説明する。
また、本学のLEAPプログラムは今年度以降も留学生に対する生活費支援を継続することから、「(日本人学生の授業料支援を行うのは)SPRING事業の方針に従ったものではない」とした。
さらに、高等大学院機構は「経済的困難がある留学生に対しては、授業料の月割分納や徴収猶予制度を通して、個別の状況に応じた対応を行う」と説明している。
日本人学生(工・博2)は、今回の変更について「東北大の動きが悪かった」と指摘する。博士学生の大半は生活に余裕がないにもかかわらず、新年度直前の通告となったことで不安が生じた。
また同学生は、新パッケージの説明会で「もらえるだけでもありがたいと思うべき」「ノブレス・オブリージュ(高貴なる者の義務)だから研究にまい進するように」などの発言があったことも見過ごせないと話す。
今年3月、本学の文系研究科博士課程に在籍する外国人留学生は、26年度から授業料を支払わなければならないと知らされた。月割分納を申請し、4、5月分の授業料は期限内に支払ったが、留学生の中には授業料を支払えず、教員の便宜を受ける学生もいるという。
一方、今回の変更で新たに生活費支援を受けられるようになった学生も少なからず存在する。
本学の方針変更に対する受け止めは、学生の立場によりさまざまだった。
