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【書評】購買で売れた本ランキング上位の本を紹介

  川内購買書籍店の売れた書籍ランキング上位30冊の中から、注目の3冊をピックアップして紹介した。


『金閣寺』三島由紀夫

三島由紀夫『金閣寺』(新潮文庫刊)

 「金閣寺を焼かねばならぬ」。それは青年の心に突然浮かんだ狂気的な思い付きであった。

 これは金閣寺に心を奪われた吃音の青年、溝口の物語だ。友人や女性を巡るさまざまな出来事を通して変化する溝口の心情が美しい文章で、丁寧に描き出されている。

 作中、金閣寺は美と結び付けられ、何度も描写される。時に自分の想像にも満たない美として、時に支配したいほどの美として。そんな金閣寺が突如として怨敵へと変貌したのだ。

 「美しい金閣寺のせいで私は吃るのだ。自らのコンプレックスはその対極にある金閣寺のせいで照らし出されているのだ」。金閣寺に火を付けるという行為によって、溝口は美の境界を破壊し、自らのコンプレックスをなくそうとしたのだ。

 作中、溝口は妊婦の腹を蹴り、流産させたことを何とも思っていないなど、私には狂った人間に見えた。しかし、そのコンプレックスから金閣寺に火を付けた狂気には自分たちにも重ねてしまうような怖さがあった。(髙木元翔)


『星を継ぐもの』ジェームズ・P・ホーガン

ジェイムズ・P・ホーガン著・池央耿訳・東京創元社・加藤直之装画・岩郷重力+W.I装幀


 月面で発見された真紅の宇宙服を着た死体。それは、なんと5万年前の人類のものであった。ジェイムズ・P・ホーガンによる『星を継ぐもの』は、この壮大な謎から幕を開ける。

 死体は現代の人間と全く同じ骨格を持ちながら、放射性炭素年代測定は死体が5万年前に亡くなったことを示している。5万年前の地球に宇宙飛行技術はない。彼は何者でなぜ月にいたのか。この矛盾に対し、物理学や生物学などの科学者たちが学際的に挑む。

 本書の魅力は、宇宙や最先端技術といった壮大なスケール感よりも、むしろ推理小説の側面を持つ点にある。物語が進むにつれ判明する新たな事実は、互いに矛盾し合う。それらが科学者らの提示する仮説によって統合される過程は、臨場感と興奮に満ちている。

 作中で月面の死体が発見されたのは、西暦2027年。人類が再び、月面に降り立つ日はいつなのだろうか。そこからどんな物語が始まるのだろうか。現実世界の月面探査計画に思いをはせながら読むのも一興だろう。(新村輝海)


『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦

『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦 KADOKAWA


 深夜徘徊は、その語が持つ「エモさ」とは対照的に危険が多い。欲望渦巻く酒場街を歩くならなおさらだ。夜の街で一人飲み歩く女子大生など、日本中探して何人いるだろう。そんな女傑の一人が、名も知られぬ「黒髪の乙女」である。

 本書は、京都の町を威風堂々歩き回った「黒髪の乙女」の物語だ。同時に、彼女に密かに好意を寄せる「先輩」の冒険譚でもある。「先輩」は時に体を張り、彼女のため、いや彼女とお近づきになるため、あまたの策を弄した。彼の努力は人知れず水泡に帰し続けていたが、彼はめげない。そんな不毛の日々が、双方の視点から、おもしろおかしくつづられている。

 過去の作品ではろくでもない大学生ばかり主人公に据えてきた作者の森見登美彦氏。本書では満を持して「普通の」大学生を主人公に据えた。

 正直なところ、本書の序盤は退屈だ。突拍子のない出来事の連続に困惑する。しかし上品な文体に下品な内容の森見節を楽しむうちに、張り巡らされた伏線がつながっていく。せめて2章まで読んでほしい。(平山遼)

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