【研究成果】新型PCメモリを開発 ―起動時間の短縮と省エネを実現―
https://ton-press.blogspot.com/2014/02/pc.html
本学省エネルギー・スピントロニクス集積化システムセンターの佐藤英夫助教と深見俊輔助教らの研究グループは、パソコンをわずか1~2秒で起動させることができ、かつ消費電力を低く抑えることのできる新型メモリの開発に成功した。京都大学および株式会社アルバックとの共同研究による成果となる。
従来のメモリであるSRAMやDRAM等の半導体メモリは、情報の保持のためには電源電圧を供給し続ける必要がある。そのため一度電源を切ると、パソコンを起動させる際にハードディスクなどからの情報の読み込みに数分間かかってしまう。
今回開発された新型メモリは、SRAMやDRAM等とは異なり「STT―MRAM(スピントルク磁気抵抗メモリ)」と呼ばれる(以下MRAM)。このMRAMは電子の電気的性質と磁気的性質(スピン)を利用したスピントロニクス素子を用いられている。磁気を利用することで電源電圧が供給されていない状態でも情報を保つことができるため、パソコンの起動に要する時間が大幅に短縮され、かつ待機時の情報保持に消費されていた電力を省くことが可能となる。
このMRAMの構造は従来のDRAMにおけるキャパシタ部分(コンデンサ)やSRAMにおけるフリップフロップ回路をMTJ(磁気トンネル接合)素子に置き換えた形をしている。MRAMの記憶はMTJで行う。MTJには絶縁体の層をはさんで二つの磁性層があり、一方は磁化が固定され、もう一方は磁化が可変である。磁化が可変な磁性層の磁化方向を変化させることで抵抗値の高低を切り替え、0と1に対応させて情報を記録する。MTJは、二つの磁性層の磁化の向きが違う時に抵抗が高く、同じ時に抵抗が低い。
今回、本学研究グループは2種類のMTJ素子(2端子型、3端子型)を開発した。2端子型については、世界最小となる直径11ナノメートルまでのサイズのMTJ素子を作製するプロセス技術を開発し、電源がなくても情報が失われず、低消費電力での書き換えが可能な二重コバルト鉄ボロン酸化マグネシウム界面構造を有する垂直磁化容易MTJを作製した。また3端子型については、様々な線幅の磁壁移動素子を作製し、磁壁移動特性や磁壁の熱安定性、素子サイズ依存性を評価した。
その結果、これまでの報告を大幅に下回る線幅20ナノメートルの素子において良好な動作を確認した。これにより、世界最小の電力で磁壁移動による情報の書き換えが可能であることを示した。
これらの技術を用いることで、パソコンの起動に要する時間を大幅に短縮でき、かつ低消費電力性能を持つ新型メモリの開発に成功した。
佐藤助教と深見助教は「今回開発したメモリによって、従来のメモリの利点を引き継ぎながら、起動速度の向上や低消費電力といった新たな利点を生み出すことができる。実用化にはあと3~5年程度かかるのではないか」と語った。
従来のメモリであるSRAMやDRAM等の半導体メモリは、情報の保持のためには電源電圧を供給し続ける必要がある。そのため一度電源を切ると、パソコンを起動させる際にハードディスクなどからの情報の読み込みに数分間かかってしまう。
今回開発された新型メモリは、SRAMやDRAM等とは異なり「STT―MRAM(スピントルク磁気抵抗メモリ)」と呼ばれる(以下MRAM)。このMRAMは電子の電気的性質と磁気的性質(スピン)を利用したスピントロニクス素子を用いられている。磁気を利用することで電源電圧が供給されていない状態でも情報を保つことができるため、パソコンの起動に要する時間が大幅に短縮され、かつ待機時の情報保持に消費されていた電力を省くことが可能となる。
このMRAMの構造は従来のDRAMにおけるキャパシタ部分(コンデンサ)やSRAMにおけるフリップフロップ回路をMTJ(磁気トンネル接合)素子に置き換えた形をしている。MRAMの記憶はMTJで行う。MTJには絶縁体の層をはさんで二つの磁性層があり、一方は磁化が固定され、もう一方は磁化が可変である。磁化が可変な磁性層の磁化方向を変化させることで抵抗値の高低を切り替え、0と1に対応させて情報を記録する。MTJは、二つの磁性層の磁化の向きが違う時に抵抗が高く、同じ時に抵抗が低い。
今回、本学研究グループは2種類のMTJ素子(2端子型、3端子型)を開発した。2端子型については、世界最小となる直径11ナノメートルまでのサイズのMTJ素子を作製するプロセス技術を開発し、電源がなくても情報が失われず、低消費電力での書き換えが可能な二重コバルト鉄ボロン酸化マグネシウム界面構造を有する垂直磁化容易MTJを作製した。また3端子型については、様々な線幅の磁壁移動素子を作製し、磁壁移動特性や磁壁の熱安定性、素子サイズ依存性を評価した。
その結果、これまでの報告を大幅に下回る線幅20ナノメートルの素子において良好な動作を確認した。これにより、世界最小の電力で磁壁移動による情報の書き換えが可能であることを示した。
これらの技術を用いることで、パソコンの起動に要する時間を大幅に短縮でき、かつ低消費電力性能を持つ新型メモリの開発に成功した。
佐藤助教と深見助教は「今回開発したメモリによって、従来のメモリの利点を引き継ぎながら、起動速度の向上や低消費電力といった新たな利点を生み出すことができる。実用化にはあと3~5年程度かかるのではないか」と語った。