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【著名人特別インタビュー復刻版①】元宇宙飛行士・山崎直子さん

-宇宙飛行士になることを決意した理由を教えてください
 小さい頃からプラネタリウムに通ったり、「宇宙戦艦ヤマト」を見たりして宇宙に興味を持っていました。一方で高校時代にはアメリカの友人と文通をしており、翻訳家や外交官といった外国と関わる職業にも憧れていました。大学時代はESSという英語で活動する部のドラマ部門に所属していました。とはいえ私の場合何かを演じるというわけではなく、裏方で舞台設定や衣装作りをしていました。3回生になってからは実験と研究に打ち込んでいました。
進路を決定するにあたり、研究職よりもロケット開発といった現場での仕事に就きたいという思いが強かったため、当時の宇宙開発事業団(現在のJAXA)に入社しました。 

-エンジニアとしてスペースシャトルに搭乗され、具体的にどのようなミッションをなされたのですか
ロボットアームを操作し、地球からの補給物資を積んだコンテナをISS(国際宇宙ステーション)に搭載するミッションの指揮及び監督を担当しました。
その他には船内の活動風景を写真に収める記録係や、様々な実験の取りまとめ役をしました。

-宇宙へ行くことへ不安を感じたことはありましたか
 特にそういった不安はありませんでした。というのも、宇宙飛行士が宇宙へ飛び立つまでの訓練期間の長さは人によってバラバラです。スペースシャトルの発射などが様々な理由から延期されることが往々にしてあるからです。私の場合は搭乗が決まるまで11年間かかり、長期間訓練することができたからです。むしろこのまま宇宙へ行けなくなることに不安を感じていました。

-訓練中や宇宙滞在中、大変だったことはありましたか
 宇宙飛行士の実技訓練のほとんどが、実は非常事態を想定したものです。コンピュータや機械の小さなトラブルから、船内での火事や空気が船外に漏れだすといった大がかりな事故の対処法まで、訓練内容は多岐にわたります。こうした非常事態訓練は、過去の宇宙飛行で実際に起こったトラブルがもととなっています。しかし毎回の飛行では必ずといっていいほど想定外のトラブルが起こってしまうので不思議です。私達の場合は一度訓練していたトラブルだったのですが、スペースシャトルに搭載されていた、地上と画像や動画を交信するアンテナが故障してしまいました。原因は一部の電子部品の接触不良でした。アンテナはISSとの距離などを算出するレーダーの役割も担っていたため、シャトルからレーザーを発射しながら微調整し、手動でISSにドッキングする方法に切り替えました。この事故は過去の飛行でも発生したことがあったため、まさか同じような事故が再度起きるとは思いもしませんでした。

-宇宙飛行士という仕事でやりがいを感じるのはどういった時ですか
 最も感慨深かったのは訓練中に種子島で見たロケットの発射です。多くの人の手によって作られたロケットが大きな音とともに空へ上っていく姿がとても印象的でした。そんなロケットに自分が搭乗し、管制室には24時間体制で私達をサポートしてくれる人達がいる。自分の飛行は多くの人たちに支えられ、私は彼ら全員の想いを乗せて飛び立つのだと思ったとき、宇宙飛行士という仕事のもつ責任と、同時にやりがいも感じました。

-今後の日本及び世界の宇宙開発に対し、どのような展望を持っていますか
 現段階の宇宙開発はどうしても国家レベルのものが主流です。しかし技術は日々進歩しており、民間企業も少なからず宇宙開発に参入してきています。日本ではまだ民間企業の進出が遅れていますが、人工衛星などが回る地球の低軌道周辺は民間でも主導できるほどの技術力はあります。日本を含めた各国企業の宇宙開発進出に期待しています。

-最後に、学生に向けてメッセージをお願いします
 社会に出ると忙しさは責任あるものとなり、自分でコントロールできません。一方で学生は自分でコントロールできる時間を持っています。望んで忙しくもゆったりにもできます。
 今の常識が5年後、10年後の常識とは限らないので、学生という時間を大切にし、心をオープンにして夢を抱いてほしいと思います。
 教科書の問題と違って、人生に答えはありません。あったとしても、行動してみなければそれが正しいかもわかりません。学生の皆さんにはそんな世界に自分が信じた道をつくり、歩んでもらいたいと思います。



*宇宙政策委員会
  ❘内閣総理大臣や各省大臣の諮問に応じて、JAXAなどと連携し、有識者の見識をもとに日本の今後の宇宙開発について審議する機関。


*この記事は昨年7月号(HPには8月)に掲載したものを、復刻版とするにあたり加筆・修正したものです。


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